2007年10月7日 All About 定年後の楽しみ方 工藤宇一
村田裕之著「リタイアモラトリアム」日本経済新聞出版社出版の紹介
モラトリアムとはもともと、天災、恐慌などの際に起こる金融混乱を抑えるために、手形の決済、預金の払い戻しなどを一時的に猶予することをいい、それが転じて学生など、社会に出て一人前の人間となることを猶予されている状態、大人になるために必要な猶予期間に用いられているそうです。それを拡張し著者はリタイアモラトリアムを「離職までの一時的な猶予期間・状態」と定義されています。
今、リタイアモラトリアムを改めて取り上げたのは、年金の支給開始年齢が繰り上げられていることと、それと並行して65歳までの雇用継続を企業に義務付けた法律により、定年退職後も、リタイアモラトリアム状態で働き続ける人が「多数派」になるからで、それにより定年者を取り巻く社会が変わるからだと指摘されています。
ビジネス書でありながら定年者にとって有益な指針を与えてくれる
本の帯に「本当の2007年問題はこれから始まる」とあったので、本書のテーマは、団塊世代が2007年から一斉定年退職を始めだすことから生じる熟練労働力不足に関連することかと、最初ガイドは勘違いをしていました。
実際には猶予期間を与えられた場合の定年者が、それまでとはどのように違ったライフスタイル(定年後の生活)を送るようになるかがテーマなのです。
さらに続いて、定年後の生活についての心理学的見地からの分析、および先進国米国のシニアを対象とした数多くのサービスの事例を紹介しています。
「多くの事例をもとにシニアビジネスの方向性を提示」とあるように、確かにシニアビジネスについて関心のある人を対象に書かれているのですが、内容が定年後の生活についての分析、また介護を含めた総括的なシニアサービスの紹介なので、これから定年を迎える人、さらにガイドのように、定年直後に生じる定年問題についてはすでに克服して過去のものとなり関心の薄い定年者にとっても、興味深く読み続けさせる迫力を持っています。
団塊世代の脳と心の見えざる変化
人間の後半生の心理学的発達段階が
■再評価段階
■解放段階
■まとめ段階
■アンコール段階
の四段階に分けられるという医学者ジーン・コーエンの説を紹介して、その中で団塊世代の多くの人が「解放段階」に達していることを指摘されています。
解放段階の特徴は
■何か違うことがしたい
■今やるしかない
■それがどうした
というような気持ちを伴った行動が頻繁にみられ、自分自身を自由に表現したり、新しいことに挑戦したりする行動も多くなるということです。
加えて、解放段階の行動パターンを
■時間解放で「不の解消型消費」(「不」とはネガチブ、つまり不安からくるもので「健康不安」「経済不安」をさす)が増える。
たとえば「健康不安」からスポーツクラブに通う。
■「不の解消型消費」の次は「贅沢時間型解消費」に向かう。
たとえば平日の自由時間を利用した旅行。
■「贅沢時間型解消費」の次は「自己表現型消費」に向かう。
たとえば中高年のアマチュアバンド。 などと分析されています。
これらの分析結果は私の定年後の体験と照らし合わせてみるとなるほどと思うところばかりです。