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シニア市場が急拡大している。日本の総人口は減少傾向だが、シニア人口は増加の一途であり、あらゆる企業は先細る若年層に代わってシニア層を取り込むために動きつつある。このトレンドを「シニアシフト」と呼び、新商品開発に携わっている村田裕之氏にお話を聞いた。商品の買い手であるシニアは、今、何を考えるべきなのか。

退職後の居場所がなくなるシニア

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「シニアシフト」には二つの意味があります。一つは人口構成のシニアシフト。つまり人口構成の山が高齢者層に移動していることです。もう一つは、それに合わせて企業が顧客ターゲットを若年層から高齢者層にシフトしていることです。

シニア全体の八割は「自立生活可能な人」です。しかし、彼らのニーズは多様で一人ひとり違います。ここがシニア向けビジネスの難しさです。私がシニアシフトの話をする場合、その対象は市場参入を目指す企業向けが大半ですが、今回はシニアおよび予備軍の皆さんに向けてお話しします。

今、シニアの皆さんがよく集まっている場所の例としてカフェがあります。コメダ珈琲店に代表されるようなゆったり過ごせるお店で、朝のラジオ体操が終わった後にモーニングセットを食べて、新聞や雑誌を読めて、同年代の仲間と歓談できる場が人気を集めています。

 

こうした場所にシニアが集まる背景には、退職後、自宅以外に行く場所が少ない事情があります。現役サラリーマン時代には毎日出かける場所があったが、退職後はそれがない。このために毎日の生活リズムが失われがちです。このアンバランス感を解消するのが、こうした早朝から開店しているカフェなのです。

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ある調査によれば、退職後、自宅に引きこもる割合は六割以上といわれています。引きこもると運動不足になり、外部とのコミュニケーション機会も減りがちです。

 

実際に私の身近にいた退職数年後の60代の男性が、最近夜中に救急車で運ばれました。奥さんに尋ねると、旦那さんは自宅にこもりがちで、犬の世話以外は一日中テレビばかり見ていて、夜は自分の部屋で酒を飲み続けていたそうです。

退職後も日々の生活リズムをつくるという意味では、自宅以外のカフェに出かけるのは非常に良いことです。最近は前掲のコメダ珈琲以外にもルノアールのミヤマ珈琲、ドトールの星乃珈琲など増えているので、いろいろ試してみるとよいでしょう。

しかし、カフェだけでは退職後の居場所が足りません。自分にとって社会的意義を感じられる新たな居場所が必要です。ところが、これを退職後に探し始めるのでは遅すぎます。退職以前の早い段階から居場所探しをするべきです。

私は50歳を過ぎたら自分の老後は自分で創るという意識を持ち、退職後の生き方を真剣に考える機会をつくるべきと思います。

 

さらには、企業も従業員に対して、家族の介護など高齢の親に関わる問題の知識を身に着けるための勉強会に参加させるべきと思います。従業員の家族が要介護状態になった時、どのようにして仕事と両立するかが大きな問題になりつつあるからです。

「半働半遊」型生活を目指せ!

退職後の生活で大切なことは、健康を維持しながら経済的な不安を解消し、社会から孤立しないことです。私がお勧めするのは「半働半遊」型の生活。これは週三日程度働き、残りは自分の好きなことに時間を費やすスタイルです。

たとえば、年金プラス10万円の所得が得られる働き方を得る。そうすれば、その10万円は、ほぼ可処分所得になり、余裕ができます。また、仕事を通じて社会とのつながりも維持でき、孤独感が薄れます。

都道府県別に一人当たりの老人医療費と有業率(仕事のある人の割合)とをプロットしたデータを見ると、有業率が三割程度で最も大きい長野県が、一人当たりの老人医療費も最も少ないことが分かっています。

私が知る限り、退職後も適度に仕事を続けている人の方が、何もしていない人よりも圧倒的に健康で元気な例が多い。ですから、退職後はやりたいことを仕事にして、「半働半遊」型の生活をする。そのためには、50歳を過ぎた頃から準備を始めることが肝要です。

スマート・エイジングという生き方

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