2024年10月11日 村田裕之の活動
日本ではほとんど見られない初版から9年後の増刷
拙著「成功するシニアビジネスの教科書」の中国語(台湾)版の増刷が決定しました。台湾での初版発売が2015年7月なので、何と初版から9年後の増刷となります。
日本では初版発売後、1年以内に増刷がかからないと、初版の在庫がなくなった段階で廃刊となるのが通例です。新刊の8割が初版のみで廃刊になると言われています。
これに比べて初版から9年後の増刷というのはかなり異例に見えます。今回の増刷に至った背景として、台湾における急速な高齢化の進展と所得水準の向上が考えられます。
日本より高齢化の進展が速い台湾
台湾の高齢化率は、2015年時点で12.5%、日本の1992年頃の水準でした。これが2025年には20.1%と予想され、2025年以降は国連の定義による超高齢社会に突入する見込みです。高齢化率20.1%は日本の2005年の水準です。
これらの数値を見ると、高齢化率が12.5%から20.1%になるまでの期間が、日本が13年なのに対して台湾は10年で、台湾の方が日本より高齢化の進展速度が速いことがわかります。
理由の一つに、日本よりも低い出生率が挙げられます。台湾の2022年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に出産する子どもの数)はわずか0.87。 日本の1.26よりも小さくなっています。少子化が高齢化を加速しているのです。
購買力平価1人当たりGDPでは台湾は日本よりも上
一方、2018年にIMFが公表した購買力平価で計算した1人当たりGDPでは、台湾は5万2,304米ドルで、日本の4万4,430米ドルと韓国の4万1,390米ドルを上回っています。
購買力平価は、生活費やインフレ率などの要素を加味しており、各国の生活水準の違いを比較的反映できる指標です。
日本の一部有識者は、2024年中に日本の1人当たりGDPが台湾と韓国に抜かれると主張していますが、実は購買力平価GDPでは、日本はすでに2018年に台湾に抜かれているのです。
台湾のシニアビジネス市場はこれからが本番
私の25年間に渡る世界各国の観察によれば、その国でシニアビジネスへの関心が高まるには、高齢化率と1人当たりGDPが一定水準以上になる必要があります。
台湾は1人当たりGDPでは日本以上であり、高齢化率でも日本の2005年頃、アクティブシニア市場への関心が高まってきた頃と同水準になってきたのです。
台湾で9年ぶりに拙著の増刷が決まったのには、このような背景があると考えられます。台湾のシニアビジネス市場は、まさにこれからが本番です。