国立大学と民間企業とのスマート・エイジング・スクエア事業の開始

脳いきいき学部風景 スマート・エイジング
脳いきいき学部風景

スマート・エイジング・スクエア事業の狙い

この事業は、個人の長寿化に対する処方箋であり、産学連携研究を通して、高齢者の心身の健康を維持・向上し、生活の質を向上することを可能とする具体的な個人の健康長寿システムを創生し、それを社会に提案することを目的としています。

センター内に設けた産学連携スペースにおいて、民間企業が地域住民にスマート・エイジングに直接つながるサービスを有償で提供します。

私たちは、このサービスを利用している地域住民がどのように変わっていくのか、「まことの花」を得ることにプラスに働いているのかを、科学的に検証します。

この事業は、地域住民に日々の生活で心身の健康を維持・向上する機会を提供しつつ、地域住民、民間企業、大学が一体となり、研究開発から商品化まで一貫して取り組める超高齢社会の新たな産学連携のスタイルの確立を目指す初めての試みです。

「カーブス」と「脳いきいき学部」から事業開始

筋力トレーニングと有酸素運動プログラムの「カーブス」を㈱カーブスジャパンが、脳の健康教室の進化形である「脳いきいき学部」を㈱公文教育研究会が、SAスクエア入居企業として、それぞれサービスを提供しています。

本来、SAスクエアは、2011年4月にオープンすることになっていましたが、震災のために延期になりました。しかし、いつまでも震災のダメージで下を向いていられないということで復旧を急ぎ、2011年6月にカーブスが、9月に脳いきいき学部がそれぞれオープンしました。

SAスクエア入居企業には産学連携契約を締結いただき、サービス利用者の心身機能向上の変化の計測評価や新たな心身機能向上法の開発研究などを共同で行っています。

また、サービス利用者には、SAセンターにおけるスマート・エイジング研究のボランティアとしての協力もいただいています。

SAスクエアから生まれたイノベーションと言う「新たな風」

SAスクエアを開始してから、従来の大学キャンパスになかった「新たな風」がすでに吹き始めています。

それは学内の雰囲気の変化です。従来なら若い学生と研究者しかいないはずの場所に、大勢の地域住民、それも年配の方が目につくようになりました。

センターの学生や研究者も、加齢医学研究所のスタッフも、SAスクエア事業の実施は当然理解しています。しかし、頭でわかっていても、当初はこの「新たな来訪者」である年配集団の存在に違和感があったようです。

かくいう当事者の私ですら、カーブスがSAセンター6階にオープンしたとき、部屋には色とりどりのカラフルな風船や花飾りが壁いっぱいに飾られ、およそ大学キャンパスでは目にすることのない女性集団がハイテンポの音楽に乗って筋トレと有酸素運動をしている光景を見て「なんて異質な空間なんだろう!」と正直感じたものでした。

何事も新しいことを始めるときは、何らかの違和感を伴うものです。この違和感は異質なもの同士が出会うときに必ず生じる摩擦のようなものです。

イノベーション(革新)というのは、異質なもの同士のぶつかり合いから生まれるとよくいわれます。

大学の研究所は、いわば最も革新的なアプローチが求められるところですので、こうした違和感は新たなイノベーション創出のきっかけとして歓迎すべきものなのです。実はこれがスマート・エイジング・スクエアをやろうと考えた理由の一つです。

高齢者の皆さんにも「新たな風」が吹き始めた

一方、本スクエア事業に参加している高齢者の皆さんにも「新たな風」が吹き始めているようです。

次に紹介するのは脳いきいき学部に参加した受講生からの声です。(出典:脳いきいき倶楽部、くもん学習療法センター発行、2011年12月)

  • 家にこもっていてはいけないと思い、積極的に習い事に参加したり、家事もしています。脳いきいき学部への参加が叶い本当にうれしい(男性)
  • 古希を迎え、新しい世界、新しい出会いを求めていました。わくわくドキドキで若い頃に戻ったよう(女性)
  • 新聞記事を見て参加しました。会場には意欲ある前向きなみなさん達ばかり。私は『井の中の蛙』だった自分を思い知りました。活気に満ちた教室のみなさんとふれ合い、週一度の学部通いが楽しく、参加できて本当に良かったと感じております。自宅学習も毎日習慣化し、家事をちょっと省略するほど宿題に向かうのが楽しみです(女性)
  • 以前より、表情が明るくなり、休日は特にアクティブになったといわれます。日々楽しくなりました。(中略)エレベーターは三階くらいでしたら使わなくなりました(男性)
  • 私は65歳で、クラスのなかではひよこです。85歳位までの方々とご一緒させて戴いていますが、皆様のそのパワーに圧倒されています。計算・音読と毎日続ける中で何だかとても楽しくなりました。音読は日に数回し、新聞なども出来るだけ音読するようになりました。脳がとっても喜んでいるようですネ!(女性)。

さらに、SAスクエア内の相乗効果も出始めています。脳いきいき学部への参加者が、カーブスに参加するようになったり、逆にカーブスへの参加者が脳いきいき学部に参加したりといったことが起き始めています。

もともとは、それぞれが個別に参加者を募集しているのですが、SAスクエアでは向かい同士のご近所さんなので、自然にこうした相互乗り入れが起きやすいのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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