「コロナうつ」の原因と対策 その2

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セロトニン生成に有用な食材

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第158回

うつ病の原因仮説

前回触れたようにストレスにさらされ続けると、脳内のセロトニンなどのモノアミンの代謝障害が起き、脳内での分泌が減り、濃度が低い状態が固定化される。

朝起きたときに「何もする気がしない」「会社に行きたくない」「起きたくない」と感じるようなら、その兆しがある。

従来、このような脳内でのモノアミン濃度が低い状態が慢性化するのがうつ病の原因だと考えられてきた。この考え方を「モノアミン欠乏仮説」という。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という代表的な抗うつ薬は、神経同士の接合部(シナプス)におけるセロトニンの濃度を上げる薬だ。

一方、最近の研究でストレス負荷がコルチゾールというホルモンを血中に増やし、海馬や脳の様々な部分を傷つけることがわかってきた。

またコルチゾールがBDNFなどの神経細胞の成長に必要な神経栄養因子の産生を低下させることも知られている。これらの「神経細胞障害仮説」もうつ病の原因説の主流になってきている。

さらに脳機能画像研究の進展により、脳内の「報酬系」と恐怖や不安を感じる扁桃体を中心とした「罰系」と呼ばれる神経ネットワークのバランスが崩れた状態がうつ病であるという説も有力になってきている。

セロトニン活性を上げるのに薬に頼らない

モノアミン欠乏仮説に基づく、うつ病などの精神疾患に対する薬物にはセロトニンに関係するものが多い。代表的なものが前出のSSRIだ。日本ではフルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)、パロキセチン(同:パキシル)などが多く処方されている。

しかし、SSRIはセロトニンを生成・分泌させるわけではない。神経同士の間隙であるシナプスに放出されたセロトニンの再取り込みを阻害するだけだ。それによりシナプスでのセロトニン濃度を高めているのだ。

セロトニンの分泌そのものを増やすわけではないので、セロトニン分泌の低下が原因の病気には効かない。したがって、うつ病でない人がSSRIを飲んでもセロトニンの分泌は増えない。

逆に、セロトニン濃度が上がったことで脳が「セロトニンが多く分泌されている」と勘違いしてセロトニンの分泌を抑えてしまい、体に悪影響を及ぼしかねない。

食事でセロトニン分泌を増やすには?

セロトニンを体内で生合成するには必須アミノ酸の「トリプトファン」が必要だ。しかし、トリプトファンは体内では作れないので食べ物から摂るしかない。

トリプトファンは豆腐、納豆、味噌、醤油といった大豆食品の他、乳製品や米、ごま、ピーナッツ、卵などに多く含まれる。

トリプトファンからセロトニンを生合成するには、ビタミンB6が必要だ。ビタミンB6はレバー、マグロ、カツオなどの赤身と、ピスタチオ、ピーナッツなどの種実、にんにくなどに多く含まれる。

さらに、セロトニンを脳内で効率よく増やすには、トリプトファン、ビタミンB6と一緒に炭水化物を摂るのが効果的だ。

筋肉を構成するアミノ酸の一種であるBCAA(Branched Chain Amino Acids)は、トリプトファンがアミノ酸トランスポーターを介して脳内に運ばれるのを阻害する。

たんぱく質と一緒に炭水化物を摂ると、インスリンの血中濃度が上がり、BCAAが骨格筋に吸収されるのを促進する。

すると、BCAAのアミノ酸トランスポーターへの吸収が低下して、その分トリプトファンが効率的に脳内に運ばれるようになるからだ。これが、炭水化物が必要な理由だ。

少し難しい説明になったが、脳内のセロトニンを増やす観点からも極端な糖質制限はしないことだ。ちなみにバナナはお勧めだ。バナナ1本の中に、セロトニンの合成に必要なトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物のすべてが含まれているからだ。

加えて、トリプトファン以外の栄養素も重要で、ビタミンB6以外にマグネシウムや鉄分などの栄養素がセロトニンを合成する際の補酵素として働く。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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