リクルート Works 2006年4月5日号
「2007年問題」として団塊世代の一斉定年退職に関心が集まっていますが、私は一斉退職は起きないと見ています。雇用延長制度の導入や早期退職者の増加、団塊世代の半分が女性であることを考えれば、実際には2005年から10年にかけて徐々に退職しているからです。
「シニア世代は時間もちでお金もち」というのも平均値にとらわれた一面的な見方です。団塊世代は、個性的な生き方を選ぶ人が増え始めた世代です。これからの団塊・シニア市場は「均質なマス・マーケット」ではなく「多様なミクロ市場の集合体」と捉えるべきです。
シニア向けのビジネスを展開する企業の多くは、「市場調査の壁」「顧客開拓の壁」「商品開発の壁」などにぶつかっています。その壁を乗り越えるヒントを本書では7つの発想転換としてまとめました。
例えば、急成長している世界最大の中高年女性専用のフィットネス・チェーンは、加盟店オーナーの9割を元の顧客が占めています。顧客として来店し、オーナーの体験談を聞くうちに自分もやってみようと決めた人たちです。これは商品に惚れた「消費者」に、今度は新たな顧客への「語り部」になってもらおうという発想の転換から生まれたものです。
また、年間20万人以上が参加するシニア向け体験学習を提供する旅行会社は、リピーターを「使い手」ではなく、無償の世話役という「担い手」の立場で旅行に参加してもらうことで、顧客ニーズが直接反映した商品を生み出し、集客につなげています。
~スマートシニアが日本の未来を明るくする~
私は、賢く知的で格好よく老後を生きるスマートシニアが日本でも増えると予想しています。団塊世代にはスマートシニアとして、豊かな生き方をしている世代になってほしい。前の世代の姿を、次の世代はしっかり見ています。先に行く世代が凛として生きる姿を見せることは、次の世代に希望を与え、日本の未来を明るくするのです。