認知症予防の確立目指す世界初の研究組織 東北大学

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保険毎日新聞 4月10日

国立大学法人東北大学は4月1日、認知症の超早期2次予防・1次予防の確立を目指す世界初の研究組織「スマート・エイジング学際重点研究センター」を創設した。同センターは、国内外の研究者と連携し、東北大学の総力を挙げて、スマート・エイジング実現に挑戦するための学際研究拠点となる。

また、東北大学が運営し、異業種企業52社が参加する「東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京」(SAC東京)を通じて、その研究成果を企業に還元し、産学連携による認知症ゼロ社会実現のための商品・サービスの開発、必要な人材育成を推進する。

日本は先進国中、最も高齢化の進んだ超高齢社会(高齢化率27.3%、2016年9月現在)で、認知症人口は認知症予備軍を含め現時点で800万人以上と推計されている。

認知症による経済的損失は、医療費・介護費など年間14.5兆円に上ると試算されており、認知症予防対策の社会的ニーズは極めて大きいといえる。

このような超高齢社会では個人や社会が活力を維持するために「一人一人が、時間の経過とともに、高齢期になっても健康で人間として成長し続け、より賢くなれること、社会全体としてはより賢明で持続可能な構造に進化すること」(スマート・エイジング)が求められ、その実現に向けた研究推進が必要になってくる。

今回創設された「スマート・エイジング学際重点研究センター」では、認知症の超早期2次予防、1次予防の確立に必要な①生体防御機構増強による認知症発症予防の試み②遺伝要因と環境要因からみた認知症の発症基盤の解明③科学的包括予防プログラムの構築と実践④認知症ゼロ実現のための生活習慣モニタリング・介入補助技術開発⑤認知症ゼロ社会における新たな死生観と経済システムの提案、の五つのテーマで研究活動を行う。

①生体防御機構増強による認知症発症予防の試みでは、個体の老化がもたらす肉体的・精神的・社会的な機能低下を細胞老化、ストレス応答、免疫機能、神経機能、運動機能などとの関係から多角的・重層的に検討し、個体におけるさまざまなレベルでの老化の基盤を成す分子メカニズムを明らかにする。

②遺伝要因と環境要因からみた認知症の発症基盤の解明では、加齢に伴うさまざまな疾患を個人が有する遺伝的要因と物理的・社会的環境から受けるさまざまなストレスによる要因との関わり合いの中で理解し、健康長寿の実現に資する新しいリスク評価指標・介入要素を得る。

③科学的包括予防プログラムの構築と実践については、加齢疾患の早期発見・早期治療を実現するための予防医学を展開し、医療制度を提案・確立する。

④認知症ゼロ実現のための生活習慣モニタリング・介入補助技術開発では、高齢者が有する豊かな経験や知性に社会的価値が賦与され有効に活用できる新しい生活環境・社会システムを科学的に構築・提案し、新しい介入技術をフィールドに実装する。

⑤認知症ゼロ社会における新たな死生観と経済システムの提案では、正常な加齢に伴う個人の肉体的・精神的変化とそれに対する社会の反応を加齢や生・死の在り方についての思想・哲学の枠組みの中で科学的に捉え直し、問題解決の新しい方策を理論・実証・実践的に模索・提案する。

同センターは卓越した成果を創出している国内外の研究機関などと連携して、国際的に顕著な成果を創出するための重点研究拠点となる。

一方、同センターの研究成果はSAC東京で実施する四つのコースを通じてカレッジに参加する民間企業に還元し、産学連携による認知症ゼロ社会実現のための商品・サービスの開発、必要な人材の育成を推進する。

SAC東京は、15年度から運営し、17年度は52社(3月27日現在)の民間企業が参加を予定している。東北大学にとっては研究成果の社会実装のための仕組みであり、企業にとっては健康寿命延伸、スマート・エイジング関連ビジネス開発のための知見を多様な角度から入手できる「事業支援カレッジ」となっている。

カレッジ参加企業は、コースⅠとⅡで、スマート・エイジング学際重点研究センター五つの研究テーマと連携した24のテーマで認知症予防に関する包括的な知見を得ることができる。

また、コースⅢでは東北大学で独自に開発した「スマート・エイジング度」による健康評価手法、脳活動計測デバイス(超小型NIRS、JINS MEMEなど)を用いた商品開発ワークショップを通じて、研究成果を商品・サービスに変換し、研究成果の社会実装を推進する。

さらに、コースⅣでは複数の先進的な高齢者施設、高齢者住宅で異業種企業による体験ワークショップを開催し、認知症高齢者との直接コミュニケーションによる研究成果の社会実装を図る。

SAC東京参加企業は、センターでの研究成果に基づく最新の知見と、認知症の現場での実践を通じて、市場性のある商品・サービスの開発を促進できるとともに、これらの活動を通じて、認知症ゼロ社会の実現のために必要な人材の育成を図ることが可能となる。

3月28日に開かれた記者会見で、東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長は「認知症を解決することが可能になれば、経済的な問題も一気に解決することが可能になるため、同センターの創設は非常に大きなチャレンジになる。現在、認知症の予防につながるさまざまな知識についての総合的な理解が求められている。同センターでは、こうした課題の克服に向けて取り組む」と意欲を示した。

同研究所の村田裕之特任教授は「SAC東京は東北大学の研究成果を商品・サービスの形で社会に送り出す橋渡しの役割を担っており、研究シーズを民間企業に提供して健康寿命延伸などのビジネスの事業支援を進めてきた。同センターの創設に合わせて、事業支援と共に、認知症ゼロ社会実現に向けて、新しい活動を生み出していく」と話した。

スマート・エイジング学際重点研究センター
保険毎日新聞

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