WHO主催Global Forum on Innovation for Ageing Populationsで基調講演
2015年10月7-8日に神戸で世界保健機関(WHO)主催のGlobal Forum on Innovation for Ageing Populationsに参加しました。
このフォーラムには世界各国からのべ200名以上が参加。1日目の夕方に主催者であるWHO事務局次長マリーポール・キエニー氏による開会の辞、兵庫県井戸敏三知事、厚生労働省山谷裕幸国際協力課長のご挨拶の後に基調講演を行う機会を頂きました。
私の後にアメリカからの基調講演者の講演、その直後にレセプションが開催されたこともあり、多くの方と名刺交換する機会を頂きました。テーマセッションは1日目の午後から始まり、10月9日まで続きました。
当該分野について各国の動向がひとまとめに俯瞰的に把握できるのがメリット
こうした国際フォーラムに参加するメリットは、当該分野のテーマについて、各国の動向がひとまとめに俯瞰的に把握できることです。同時に、各国の当該分野のエキスパートが一堂に会するので、そうしたキーパーソンとの人脈形成が容易なことも大きなメリットです。
これらのメリットは、SNSなどのネット上のやりとりだけでは決して得られないものです。今後ネット技術が進化したとしても、直接顔を合わせる会合の価値は決してなくなることはなく、むしろ、その重要性はますます高まると思います。
また、私のフェイスブックページで紹介しましたが、こうしたフォーラムでの意見交換を記録する興味深い試みに触れることもできました。それはセッション毎にスピーカーが話した要点を似顔絵と共にビジュアルでまとめているものでした。
これを見ると各スピーカーの話したことの共通点も、このセッションの全体像も一目でわかります。
これは話の内容をきちんと理解しないと描くことが出来ない、とても知的な創作です。こうした新たな発見も実際に参加してみて初めて知ることのできるメリットです。
各テーマセッションの密度・質の向上が課題
一方、運営上の課題もいくつか感じました。
第一に、各テーマセッションの密度・質の向上が求められることです。これは先に述べたメリットの裏返しで、せっかく、これだけのキーパーソンがリアルの場に集まったのであれば、そこでしか得られない「知的格闘技」がもっとあってよいと思います。
多くのセッションが3-4人のパネリストからなるパネルディスカッション形式でした。しかし、いくつかのセッションでは各パネリストによる冒頭の自己紹介的発言が必要以上に長く、結果としてディスカッションの時間がほとんどなくなっていました。
一般に日本人以外のパネリストは、主張したい結論がはっきりしないまま、ダラダラと長く発言する傾向があります。このため、モデレーターには適宜発言途中でカットインしたり、発言後に内容を要約したり、などの工夫が求められるのですが、そういう配慮があまり見られませんでした。
日本人がモデレーターを務める場合、こうした適度な「仕切り」を「英語」で行うのは、それなりの力量が必要です。
今回私が参加したセッションで最も印象に残ったのは、政策研究大学院大学の黒川清教授の仕切りでした。
黒川先生とは今回初めてお目にかかったのですが、外国人に対しても臆することなく、堂々とした姿勢で仕切られているのを拝見して、大変頼もしく感じました。こうした先人の存在を知ることができ、大変勇気づけられました。
第二に、3日間の日程は長すぎること。参加者は皆忙しく、3日間フルに参加できる人は少数でしょう。私も最終日の9日は東京で別なイベントがあったため、参加できませんでした。
長くても2日で完結させる方が参加しやすいでしょう。そのためには、セッションテーマを精査して「これは参加したい」と思わせるものに絞り込むことが必要でしょう。
日本人が世界に発言する機会は今後間違いなく増えていく
このフォーラムに参加して改めて感じたことは、個人や社会の高齢化に関して、高齢化率世界一の国の国民である日本人が世界に発言する機会は今後間違いなく増えていくだろうということです。これは拙著「シニアシフトの衝撃」のエピローグで予言したことです。
そうした機会には、自分の信念や考えを、英語で相手に正確に伝わるように話す力量が必須になります。今回のフォーラムでは同時通訳がありましたが、日本人以外の参加者にメッセージを伝えようと思うなら、通訳を通してではなく、自分の言葉で伝えることが重要です。
ただ、英語で話すといっても、ネイティブでない日本人は、ネイティブのごとくペラペラ話す必要は全くないでしょう。むしろ、自分の信念を言葉での表現に凝縮する力、岡本太郎的に言えば「強く生きる言葉」で語る修練こそが重要だと改めて感じた次第です。
最後になりましたが、WHO神戸センターの皆様には大変お世話になりました。これだけ大きなイベントの準備・運営には大変なご苦労があったものと察します。若干今後の課題を述べさせていただきましたが、今後のよりよい運営の参考になれば幸いです。
本当にありがとうございました。