Journal of Clinical Rehabilitation 12月号
医歯薬出版が発行している医学系学術雑誌Journal of Clinical Rehabilitationのシリーズ連載「障害者のリハや介護に役立つテクニカルエイドと環境整備」の連載第二回が掲載されました。
介護ロボットへの期待は、国内はもとより海外の介護事業者が高い関心を示しており、10月6日に行われたAAIF in Japanでも午後のセッションの大半は介護ロボットについての話でした。
また、昨日(24日)来日したフランス企業視察団も日本の介護ロボットに高い関心を示しているようです。寄稿の内容は次の通りです。
1. 利用者の立場から見た課題と対策
(1) 情報面での課題
① 介護ロボットのことがよくわからない
② 活用実績・事例がわからない
(2) 機能面での課題
① 現場ニーズと乖離している
② 使用準備などに手間がかかる
③ 安全性に不安がある
(3) 経済面での課題
① 価格が高い
② 人が介在しないと使えず、費用対効果がみえない
(4) 業務面での課題
① 現場の業務フローが画一的でなく、ロボットでの作業になじまない
② 業務効率の追求が必ずしも歓迎されない
(5) 意識面での課題
① 経営改善のために介護ロボットを使う意識が希薄
② きめ細かな作業の介護は所詮ロボットには無理という意識が強い
2. ロボット開発者における課題
(1) 介護従事者をロボットで代替しようとする
(2) ロボットでの作業を全自動化しようとする
(3) 自社技術の誇示が自己目的化する
3. 将来展望
ここまで介護ロボットの普及に必要な課題と解決策を述べた。あとはこれらを地道に実行し、実績を積み上げることが必要だ。そのうえで、さらに重要なことを述べる。
先述の通り、かつて建設ロボットの開発・普及に取り組み、日本発の非薬物認知症療法「学習療法」の米国への輸出に取り組んだ経験から言えることは、介護現場へのロボット導入の究極ゴールは、その導入によって介護の質が劇的に変わることである。
つまり、導入によって介護される人がスタッフに介護される負い目を感じることがなくなったり、認知症の症状が改善したりして、導入前よりも笑顔が多くみられるようになり、スタッフに感謝の気持ちを表現できるようになることだ。
そして、介護するスタッフも重労働が減り、腰痛から解放されることで元気になり、介護される人から「あなたのおかげで気持ちよく過ごせるわ。ありがとう」と感謝されることで、仕事に対するやる気が増すことである。
このような感謝の気持ちのキャッチボールにより、介護する人とされる人との関係性が改善し、より深まっていく。その結果、介護現場全体の雰囲気が良くなっていくことで、介護施設の経営が改善していく。
こうした好循環の中核に介護ロボットが位置づけられるように開発・改善していくことが、ロボット開発者が目指すべき姿である。このような思想で開発された介護ロボットは、前号で述べたシニアシフトが世界中に広がるにつれ、必ず世界各国から求められるようになるのは間違いない。
日本の高度な技術力と日本人の細やかで温かいマネジメントこそが介護ロボットの価値の神髄なのだ。