シニア「自分史」に熱 人生のけじめつける

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日本経済新聞夕刊 20141022日 読み解き現代消費

「自分史」がシニアの間で静かなブーム

ここ数年、「自分史」がシニアの間で静かなブームだ。功成り名を遂げた人の立志伝と異なり、普通の人が自身のそれまでの生涯を書きつづったものである。今年8月、東京都内で開催された「自分史フェスティバル」には、お盆中にもかかわらず大勢のシニアが訪れていた。

紙に印刷した本を自費出版することが多かった自分史の作成や公表の形態も変わってきた。シニア層でもパソコンやインターネットを使うのが当たり前になり、デジタルカメラやスマートフォン、スキャナーなどのデジタル機器を駆使して、写真や動画入りの自分史をWEBで公開する人も増えている。

内容も人生の振り返りや古い写真の整理など生活史の記録から、エンディングノートや葬祭時の記念品にするといった「終活」の一環まで、裾野が広がっている。

 興味深いのは、自分史を書き始める時期が、70代を中心に前後10年間に集中している点だ。なぜ、人はこうした年齢になると、自分史を書きたくなるのか。

理由の一つは、加齢とともに脳の構造変化が起こること。年長者は若年層に比べ、脳の多くの場所をよく使うことが最近の研究で分かってきた。

人生の出来事を回顧する行為は脳の資源が広範囲に活用されるため、これまでの経験がより「豊かで生き生きとした」ものに感じられると考えられている。つまり自分史の作成は、こうした年齢では心地よい作業になるのだ。

  もう一つの理由は「自分のことは自分の代で始末をつけたい」という価値観が強まっていること。自分たちは高齢の親のトラブルなどで苦労してきたが、同じ思いを子供の代にはさせたくないという気持ちだ。

こうしたシニア世代共通の現代的な価値観が、人生のけじめとしての自分史やエンディングノートなどの作成意欲を高めているのだ。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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