2025年1月22日 22:00~23:00 ABEMA
高齢者向けに「テック」を使っただけでは価値は上がらない
1月22日(水)22時からのABEMAのニュース・情報番組「ABEMA Prime」に出演しました。今回は専門家としてビデオでの出演でした。
番組のテーマは放映時に「高齢化問題を技術で解決!エイジテック最前線に迫る」となっていました。
実はこのテーマ文章を番組出演依頼時に聞いていませんでした。正直言って、私はこのテーマ設定に違和感があります。
その理由は、私は以前から「高齢者向けサービスに技術を使えば、必ずしも価値が上がるわけではない。利用者の観点では、エイジテックを謳う製品・サービスには、技術による価値向上を含む『トータルな価値』が求められる」と言い続けているからです。技術だけで解決するほど、高齢社会の課題は簡単ではありません。
日本発のエイジテックが目指すべき方向とは
「エイジテック=介護製品」という思い込みは禁物
番組の冒頭にひろゆき氏から「高齢者が多くなって、技術が生まれても、それが浸透するかは別の問題」という発言がありました。これはその通りだと思います。
ただし、ひろゆき氏は、最後のまとめで「結局、その製品が介護保険でまかなわれるかどうかで市場への浸透が決まる」と話しています。
番組で紹介された製品が介護向けのものが多かったせいか、エイジテック=介護製品という思い込みをされている点と、介護保険を適用すれば市場に浸透するという短絡的な見方をされている点が残念でした。
一方、夏野氏が「高齢者向けに売れるのは、前のコーナーで話題になった金融弱者向けの金融商品とサプリだけ」と発言されたのを聴いて、正直驚きました。シニア市場の現状について、ほとんどご存じないことがわかりました。
NTTドコモ時代にiモードの推進者だったためか、シニアを対象に累計2500万台以上売れた同社の先駆的エイジテック、「らくらくホン」についての言及が一切なかったのも残念でした。
従来型老眼鏡代替市場は、すでにレッドオーシャン化している
大阪大学発のスタートアップ企業、エルシオが「自動でピントが合うメガネ」をCESへ出展したこともあり、番組のなかで比較的長い時間質問を受けていました。技術は大変ユニークで面白いと思います。
一方、このメガネと同じコンセプトの製品がヴィクシオンという会社からすでに発売されています。価格は99,000円(税込)。番組でエルシオの担当者が「ターゲット価格は10万円」と話していたのは、これをベンチマークしているからでしょう。
これらは比較的最近の例ですが、実はこの「従来型老眼鏡代替市場」には「ハズキルーペ」という大ヒット商品があります。価格は7,980円(税込)で、前者の10分の1以下。石坂浩二や舘ひろしをCMに採用し、それまでの老眼鏡の「ジジ、ババ臭さ」を払拭して、8年間で累計500万本販売しました。
さらに、眼鏡市場、JINS、メイガンなどの既存のメガネ店が、お洒落な老眼鏡を多数販売しています。このように「従来型老眼鏡代替市場」は、すでにレッドオーシャン化しているのが現状です。
老眼鏡は常にかけている必要がなく、遠近両用メガネのように常にかけていると逆に違和感があるので、必要な時だけかけるのがよいと感じる人は多いのではないでしょうか。
日本発のエイジテックは応援したいのですが、テックだけで売れるわけではないので、何本もの矢を用意する必要があります。