ノジュール2020年6月号 今日から始めるスマート・エイジングのススメ第9回
前回5月号では、「自分軸」で生きるためには、「自分ミッション」を持つことが重要であるとお話しました。「自分ミッション」とは、会社軸で生きる機会がなくなった時に、自分は何のために生きるのかの使命・役割のことです。
今回は「自分ミッション」の身近な深め方をお話します。これは①現役ビジネスパーソンの方と②退職した方とで異なりますので、分けてお話します。
「自分ミッション」はできればビジネスパーソンの時から準備しておきたいものの、もちろん退職後でも見つけられます。「自分ミッション」を今日から見つけて、退職後の人生も一層輝かせましょう。
現役ビジネスパーソンが自分ミッションをもつ方法
現役ビジネスパーソンの場合、自分ミッションをもつ一番いい方法は、職場での担当業務をとことん突き詰めることです。
山本隆さん(仮名、69歳)は勤務していた石油化学会社で、30年以上設備の非破壊検査という専門性の高い仕事をしていました。実は私は彼から何度か転職の相談を受けました。食べていかないといけないので仕事を続けていましたが、その会社での処遇に必ずしも満足していなかったのです。
しかし、彼はその仕事を通じて頻繁に海外出張したり、大学に国内留学したり、社外の専門家との交流など、様々な体験機会が多くありました。
こうした他の人にはなかなかできない体験を通し、彼はこれが「自分ミッション」であり、生きがいであると気づきました。結局、彼は定年後もその専門性を活かした仕事をしています。
このように会社生活中でも、それが自分の気持ちの向くものであって、突き詰めていけば、退職後に「自分ミッション」になる可能性を秘めているのです。継続は力なりです。
「自分ミッション」は仕事でなくてもよい
逆に、会社でやってきた仕事はもうやりたくないという人もいます。そういう場合は、改めて自分がやりたいことを「自分ミッション」にすればよいのです。趣味の楽器演奏をとことん突き詰めたければ、それもよいでしょう。
4月号で触れたように65歳でそれまでの仕事をスパッと辞めて、災害ボランティアを自分ミッションにした人もいます。英語を極めて、日本を訪れる多くの海外の人と交流をしたい。小さい頃好きだった絵画をまた勉強して、これからの旅の思い出を絵に残したい等々……。
いま自分の気持ちが向くもの、わくわくするものを、改めて洗い出してみましょう。小さい頃好きだったものにも、ヒントがあるかもしれません。そして、これからの人生で突き詰めていきたいものか、考えてみてください。
重要なことは、現役のうちに社業に差しさわりのない範囲で、少しずつその準備を進めておくことです。
退職者は自己表現するツール習得が「自分ミッション」の深堀に役立つ
退職してから「自分ミッション」を探して見つけ出す人も大勢います。安川徹さん(仮称、72歳)は典型的な会社人間。まさに「会社軸」で生きてきた人でした。
退職後、何をしようか迷っていた時に「ブログ」の立ち上げを助言しました。それまでブログなど全くやったことのなかった安川さんは試行錯誤を繰り返し、若者を応援するブログを立ち上げました。
初めは少なかったアクセスも徐々に増え、多くの若者から「勉強になる」「励まされる」という声が届くようになりました。さらにこれがきっかけで、私立大学の非常勤講師を務めることになりました。若者に時代を超えて大切なメッセージを届けることが自分ミッションになったのです。
西本喜美子さん(92歳)は、以前はやることがなくぶらぶらしていましたが、72歳の時に長男が主宰する写真講座への参加をきっかけに、一眼レフでの写真撮影を始めました。その後インスタグラムへの投稿が話題を呼び、今ではフォロワー22.6万人をもつ「インスタおばあちゃん」として有名になりました。彼女は写真による自己表現が自分ミッションになったのです。
このように退職者にとっては、自分を表現するツールの習得が自分ミッションの深堀に役立ちます。道具が意識を進化させるという言葉の通り、自分に合ったツールを見つけ出し、徹底的に使いこなすことで自分ミッションが見えてきます。