保険毎日新聞 大胆予測!30年後の保険業界 ライフスタイル編
従来の高齢者像にとらわれない新たな高齢者政策が必要
総務省の発表によれば2015年9月15日の時点で65歳以上の高齢者の人口は3384万人、総人口に占める割合は26・7%と世界1位、人口、割合ともに過去最高を更新。世界2位のイタリアとの差は拡大し、そのスピードはさらに加速している。
総務省「人口推計」によれば、20年後の2035年、日本の高齢化率は33.4%と予想されている。道で行き会う人の3人に1人が65歳以上の高齢者―そんな未来が現実になる。
高齢化の課題で注目されているのが「2025年問題」だ。2025年に約800万人と他の世代に比べ数の多い団塊世代が75歳を超える。75歳を超えると、受療率(病院で治療を受ける率)や要介護認定率、認知症の発症率が急増するため、医療費や介護費が膨張し、社会保障制度が危機的状況に陥るのではないかと問題視されている。
国は今後を見据えた取り組みとして、15年8月から介護保険法等を一部改正し、利用者の費用負担について、所得160万円以上の高齢者の負担を1割から2割に引き上げた。とはいえ、利用者の負担を増やす施策には限界がある。
日本が超高齢社会を健全な状態で維持するためには、高齢者がなるべく医療・介護に依存せず、健康に歳を重ねる高齢者を増やすことが必要だ。シニアビジネスのパイオニアで高齢社会研究の第一人者、村田アソシエイツ代表の村田裕之氏はこうした日本の未来像について「従来の高齢者像にとらわれない新たな高齢者政策が必要」と語る。
村田氏が提案するのが「シニア・パートナー制度」の導入だ。村田氏は社会の高齢化に伴う大きな問題の一つとして、1人暮らしの高齢者の増加を挙げる。2015年現在、高齢者男性の12.9%、女性の21.3%が1人暮らしだが、2035年にはそれぞれ16.3%、23.4%に増える。
非婚や離婚、死別など、さまざまな理由で1人暮らしの高齢者が増加しているが、1人暮らしになると孤独感や他者とのコミュニケーション不足から、うつ病や認知症になりやすく、孤独死のリスクも上がる。
村田氏が提案するのが「シニア・パートナー制度」の導入
そこで1人暮らしの高齢者が再婚または事実婚の形で新たなパートナーを得られれば、コミュニケーション機会が増え、生活に潤いが増し、病気にもかかりにくくなると村田氏は言う。事実、ここ数年、熟年婚活に特化したお見合いパーティーや婚活サイトなどが人気を集めている。
村田氏はこうした流れを拡大させるためには、法整備が必要だと指摘する。高齢者は特に子供がいる場合、相続トラブルを避けるために再婚・入籍に抵抗を感じる場合も多い。
一方、事実婚の場合、配偶者控除を受けられない、生命保険の受取人になりにくい、社会的信用を得にくいなどのデメリットがあるため、高齢者の選択肢になりにくい。
こうした課題を解決し、一人暮らしの高齢者を減らすことで、明るい超高齢社会を築くことが可能となろう。