地方移住 歓迎と戸惑い

新聞・雑誌

読売新聞 2015年6月5日

6月5日の読売新聞の1面と特集面に、4日発表のあった日本創生会議による提言のうち、高齢者の地方移住に関する記事が掲載されました。これに対する取材への私のコメントの一部が次の通り掲載されました。

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米国では、高齢者の移住を前提にした地城づくりの仕組みがある。介護施設や住まいを備えた「CCRC」と呼ばれる共同体が約2000か所あり、推定75万人が暮らす。日本も、政府の有識者会議が今月、米国を参考にした「日本版CCRC」構想の素案をまとめ、全国の自治体の1割が推進の意向という。

ただ、日米のシニア事情に詳しい東北大の村田裕之特任教授は、「米国では土地が広く、住宅も安いので、引っ越しに抵抗感が少ない。一方、日本では、年金の不安などから定年後も仕事を継続したい人が増え、住み慣れた自宅を離れようとは思わないのではないか」と見る。その上で「高齢者だけを集めると、地域に活気がなくなる。仮に移住を進めたいのなら、若い人も住みたくなるような魅力のある地域作りを行うべきだろう」と語った。
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私への取材は、創生会議の発表の前に行われ、主に「日本版CCRC」構想に対する意見を求められたので、上記の記事になっています。

日本創生会議による今回の提言は、東京圏で将来、施設不足、職員不足による介護危機が起きるので、東京圏の高齢者を医療介護余力のある地方に移住させよ、そうすれば地域の雇用も増え、地方創生になる、というものです。

記事には複数の識者のコメントが掲載されていますが、私が一番気になるのは、高齢化の進展=要介護高齢者の増加=介護施設・職員の不足という視点のみで、要介護高齢者を減らす=もっと予防に注力する、という視点が欠けていることです。

一方、地方在住の人からは「東京で介護しきれないから地方へ移住すればって、あまりに短絡的です。皆さん同じことを感じてらっしゃると思いますが、地方には、東京以上に人材も金も施設も医療の余裕もありません。この会議の『有識者』の皆さんが、地方をどんな目線で見ているか、透けて見えるような気がします。」といった、厳しい声が聴かれます。

高齢者が増えるから収容施設を増やせ、首都圏が足りないなら地方につくれ、という発想は高度成長期のハコモノ行政と何も変わっていないことがよくわかります。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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