日経ビジネス2015年1月26日号 スペシャルリポート シリーズ大胆提言
「軽薄短小」だけでは日本に未来はない
日経ビジネスは1982年「産業構造軽・薄・短・小化の衝撃」という特集を企画し、軽薄短小こそが日本の生きる道だと提言しました。しかし、今回の1月26日号で『その主張を今、撤回する。「軽薄短小」だけでは日本に未来はない』というリポートを掲載しました。
その背景は、世界的に、小ささを売り物にした商品の競争力が低下し、儲からなくなってきているという分析です。
理由の一つは新興国。住環境や国民性の違いを背景に、冷蔵庫から乗用車まで強く支持されるのはもっぱら大型サイズの商品で、核家族化が進んでいる国内市場にあっても、大型商品の人気がにわかに回復してきたというのです。
もう一つの理由は、コモディティ化の進展などを受け、分野を問わず、小型商品の利益率が大型商品より下がる傾向にもなりつつあること。
レポートでは、製品1kgあたりの価格を比較し、腕時計、カメラ、電卓などの「軽薄短小」製品の価格が大きく下がっている一方、乗用車、ロボット、複写機などの「重厚長大」製品の価格は上昇しているとしています。
「重厚長大」製品の一例として、核家族化が進む中、大人数での利用を前提とするキャンピングカー市場の拡大が取り上げられています。けん引役が60代だということで、私へのインタビューが引用されています。
「軽薄短小」製品がコモディティ化するのは「コンバージェンス」進展の結果
実は「軽薄短小」製品がコモディティ化し、価格が下がっていくことについては、私は10年前から「コンバージェンス(convergence)」の進展の結果として予想していました。
「コンバージェンス(Convergence)」とは、もともとは違ったものが、互いに似てくることを言います。異なる業態の商品(サービス・店舗)間でコンバージェンスが進展する過程には、次の段階が共通に見られます。
(1) 互いに相手商品の機能を取り入れる(相互学習)
(2) 商品の改善と選択が進む(淘汰)
(3) ほぼ同じような商品となる(統合)
そして、この過程において、各々商品は次の特徴をもつようになる。
(1) 多機能 Multi-function
(2) 一か所集中 One-Stop
(3) 小型軽量 Compact
(4) 低価格 Price Down
商品間コンバージェンスの特徴とは
商品間コンバージェンスの第一の特徴は、多くの機能が一か所あるいは一つの製品に集中することです。たとえば、携帯電話では、電話機能にネット接続機能、デジカメ機能、PIM(個人情報管理)機能、GPS機能、音楽再生機能、クレジットカード機能などの多くの機能が搭載されるようになりました。
その結果、スマートフォンという一つの製品に進化したのです。スマホが持っているこれらの機能はもともとそれぞれ別の製品の機能でした。
第二の特徴は、小型軽量化・低価格化が進むこと。特にIT、デジタル機器ではよく見られます。
このように当初は差異化を図り、互いに異なるサービスでも、しばらくすると互いに似たような内容になり、価格競争になります。この価格競争から脱するために、別の差異化を図り、それでしばらくは優位に立てます。
しかし、すぐに競合先が真似をし、似たような内容になっていき、また価格競争になる。家電製品などを見ればおわかりのとおり、こうした繰り返しのインターバルが、一昔前に比べ、どんどん短くなっています。
情報化社会ではコンバージェンスが起きやすい。今回のスペシャルリポートでは触れられていませんが、軽薄短小製品が低価格になっていくのは、社会の情報化が進んだことが根本的な背景です。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20150122/276581/?ST=pc