MED Japan2023報告:この社会をよくするために、小さくても何かをやってやろう

MEDJapan2023プレゼンター全員 シニアビジネス
MEDJapan2023プレゼンター全員

2023年10月1日 日本科学未来館 MED Japan2023

MEDとは?

MEDとは、Make Everyone Delightedの略で、「いのちの場から、社会を良くする」志を抱く人が集う場です。

これまでに300人近い各分野のフロントランナーがプレゼンターとして登壇し、多くの参加者が気づきと学びを得てきました。昨年は私も登壇の機会をいただきましたが、今年は共催者の一人として参加しました。

以下に、全てのプレゼンと講演の聴きどころを私の視点で速報しました。近いうちに全ての動画が公開される予定ですので、その参考にしていただければ幸いです。

開会の辞:田坂広志さん/シンクタンク・ソフィアバンク代表・21世紀アカデメイア学長

田坂さんから、米国と日本との社会起業家支援の違いについて次の話がありました。

米国にはアショカ(Ashoka)という社会起業家を支援する団体があるが、支援されるのは少数の、いわば「スーパーアルピニスト」である。これに対して、日本では、たとえ活動が小さくても、「一隅を照らす」活動をする人なら、誰もが社会起業家であるという考えの方が相応しい。

MED: Make Everyone Delightedという名前は、まさにそのことを示している。今日参加の皆さんはどうかプレゼンターの話を聴いて、「ああ、いい話が聴けた、勉強になった」にとどめるのではなく、今日の参加をきっかけに、小さくてもよいので「この社会をよくするために何かをやってやろう」と一歩踏み出してほしい。

MED Japanのサイトに「MEDはいつも草の根の人たちの一隅を照らす行動とともにあります。」とあります。このMEDの位置づけと狙いを冒頭に確認したお話しでした。

松山真之助さん/ビジネスをアートにする研究所 代表

松山真之助さんは、有名な書評メルマガ「Webook of the Day」の主宰者。その彼が、2018年に中小企業の事業支援の仕事のために熊本県人吉市に引っ越しました。その後の2020年7月4日に大洪水が起き、そこでの奮闘の記録を「臨機応“援”」と題してお話しになりました。

私も人吉市の豪雨と大洪水の話は、メディアを通じて知っていました。しかし、松山さんが示した現場の生々しい写真や動画で、改めて被害の甚大さを認識しました。

最近全国中で突発的な豪雨で、大洪水が起きる場合が増えています。いわば「陸の津波」が起きた後、何が起きるのか。最初の一番の難題は、あふれるゴミの山をどう処理するかです。松山さんがどのようにして、この難題を解決しようとしたかが語られました。

ごみ処理の専門家ではない松山さんが、アイデア、フットワーク、ネットワーク、そしてお人柄によって、周りの人の共感を呼び、解決へと向かっていくお話しです。誰もが自然災害に巻き込まれる可能性のある時代、誰もが「臨機応“援”団長」になるヒントが得られます。

玉置妙憂さん/非営利一般社団法人 大慈学苑 代表

現役の看護師であり、僧侶であり、ケアマネジャーであり、スピリチュアルケア師として大慈学苑代表を務める玉置さん。事前の予定を変更してお話しされたのは、孤独死で死後2か月放置されていた60代前半の生活保護受給者の男性の話でした。

世の中には様々な社会保障の「制度」、例えば健康保険、介護保険、終末期病院、アディクション(アルコール・薬物依存症など)対応病院、訪問医療、訪問看護などがあります。しかし、この孤独死された方は、どの制度にも対象とならない、いわゆる「制度のスキマ」にいた方だったとのことです。

例えば、高齢者ががん患者になると、何らかの制度が適用できるそうです。しかし、この男性のようにどの制度にも適用できない例があり、今後増えていくことが懸念されています。

そもそも制度とは、増えてくる社会的ニーズに対して作られるものですが、それでも埋めきれない「スキマ」が存在する。このスキマをどう埋めていくのか知恵が求められるというお話しです。

本嶋孔太郎さん/弁護士 RULEMAKERS DAO コミュニティマネージャー

今まで国のルールメイキング(政策決定や制度改革、法改正)は、一部の利害関係の多い有識者以外、実効的に関与するのは難しい状況でした。その結果、新しい挑戦がしづらいルールがずっと維持されてきました。

弁護士の本嶋さんは、RULEMAKERS DAOというボランティアコミュニティを通じて、国のルールメイキングを変えようという活動をしています。

今までルールメイキングに関与できなかった10代~20代(+東京以外の地域の人)を中心とした挑戦者がメインで活動しているとのこと。

私には、新しい民主主義と言うより、本来あるべき民主主義の姿を取り戻そうとする動きに見えました。

菅原由美さん/全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス代表

菅原さんが代表を務めるキャンナスは、地域に住んでいる看護師が忙しい家族に代わって介護のお手伝いをする「訪問ボランティアナースの会」です。キャンナスが注目を浴びたのは、2011年の東日本大震災の時、半年で延べ15000人の医療職を現地に送り込んだことからです。

避難所に住民とともに寝泊まりをする生活をしたことから、「被災地のナイチンゲール」と評価されたのですが、実態はボランティアのため、ホテルに泊まるお金を使えなかったという泥臭い裏話がありました。

先の玉置さんが話した「制度ではできないこと」を、看護師が医療者としての資格と体験をもとに、各地域で自律的に活動するという試みです。

ちなみに、菅原由美さんは、介護分野で有名になった「ぐるんとびー」の代表、菅原健介さんのお母さんでもあります。

畠中一郎さん/一般財団法人すこやかさ ゆたかさの未来研究所代表理事

畠中さんは、そうそうたるキャリアを積んで還暦を迎え、人生の回想モードになった2021年8月4日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断と余命宣告を受けた方です。

にもかかわらず(いや、そのせいで)、その1年後にALSと診断を受けた方を支援するための一般財団法人を立ち上げました。ALS罹患、そしてそれを乗り越える自身の旅路が自分のミッションだと信じたとのことです。

人は誰でもいつか死ぬ。ただ、いつ死ぬかはわからないのが通常です。

もし、自分が彼と同じ境遇に立ったら何を感じるか、どうするか。畠中さんと年齢が近い私は、彼のプレゼンが他人事に聴こえませんでした。

丸尾 聰さん/丸尾経営教育研究室 代表

丸尾さんは、私の日本総研時代の同僚で、彼のプレゼンを聴いたのは25年ぶりでした。当時から彼のプレゼンは、くどくど文字で説明するのではなく、煎じ詰めたエッセンスを直感的に示すスタイルでした。

冒頭に「わからないことをすぐネットで調べる習慣は、考える力を下げるのではないか」との問題提起がありました。私は「そのとおり」と心の中でつぶやきました。

実は東北大学の川島隆太教授の研究で、スマホで検索している時の脳(前頭前野)は、ほとんど活動していないということがわかっていたからです。

クリエイティブな発想力や考える力を持つために必要なスタイルは何か、のヒントが得られる話です。

宇井吉美さん/株式会社aba 代表取締役 CEO

宇井さんの話を聴いて、介護業界に有望なケア・テックのスタートアップが現れたと思いました。

私はかつて経産省・厚労省が5年間実施した介護ロボット開発支援のプロジェクトで、開発機器の評価委員を務めたことがあります。沢山の介護ロボットを見てきましたが、実際にモノになったのはごくわずかでした。

上手くいかなかった最大の理由は、「作り手」のメーカーは介護現場のニーズをよく知らず、自分たちの技術的優位性をアピールしたがること、「使い手」の介護事業者はメカニックが苦手で、毛嫌いして使いたがらないことでした。

宇井さんの強みは、おばあちゃんの介護経験を持ちながら、エンジニアとしての経験を積んでおり、「作り手」と「使い手」の両方の目線を持っていることです。

私が長年審査員を務めているシンガポール拠点のAsia Pacific Eldercare Innovation Awardsで、ぜひプレゼンしてほしいと思いました。

鶴岡秀子さん/レジェンド一般財団法人 代表理事

日本では少ない女性のシリアル・アントレプレナー(新しい事業を何度も立ち上げる起業家)の鶴岡さんは、「自分の出番を見つけよう」をテーマにお話をされました。

人に出番をつくることがその人の成長のきっかけになる、と言う例として、2011年11月3日に千葉県長生郡一宮町の一宮中学校で実施した「1000人で二人三脚をしてギネスブックへの登録を目指す」プロジェクトの話がありました。

このプロジェクトでは、最終的に1,006人が、同時に二人三脚で200mを完走して見事に記録が達成されたのですが、その過程で協力依頼でありながら、結果としてその人の出番づくりになっているところが優れていると思いました。

私はこの話を聴いて、リタイアして出番がなくなって、モヤモヤしているシニア男性向けに応用が効くと思いました。

佐藤伸彦さん/ものがたり診療所 所長

佐藤伸彦さんのことは多くの友人たちから「ものがたり合宿」の話を通じて知っていました。

「ものがたり合宿」の話は何度も聞くのですが、合宿でのアトラクションの話が大半で、肝心の「ものがたり」の意味がこれまでわかりませんでした。今回のお話しでようやくその意味がよくわかりました。

「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」

これはフランスの画家、ポール・ゴーギャンの絵画の題名ですが、佐藤さんは、この絵画のスライドを背景にして、限られた時間のなかで「我々は何者か」について語ってくださいました。ただし、「我々」を「私」にして、話は進みました。

とりわけ私が共感したのは、佐藤さんが「私らしさ(自分らしさ)」とは何かについて語った瞬間です。

実は手前味噌で恐縮ですが、拙著「スマート・エイジングという生き方」(2012年)と「スマート・エイジング人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(2019年)で記した「自分らしさとは何か」の考え方と同じだということが分かったからです。

あなたも「ものがたり」で出来ている、という言葉の意味が、今回の話でようやくわかりました。

基調講演:田坂広志さん/シンクタンク・ソフィアバンク代表・21世紀アカデメイア学長

最後は田坂さんによる基調講演「21世紀の教育は、どこに向かうのか」

第四次産業革命が進展し、高度なロボティックス技術と人工知能(AI)技術が社会全体に広がっていく。その結果、人間の能力の多くを、ロボティックスとAIが代替していくため、社会で活躍する人間の条件が、根本から変わっていく。

これからの時代、人間に求められる能力は、どう変わっていくのか。それに伴い、教育の在り方は、どう変わっていくのか。大学や専門学校などの教育機関は、どう変わっていくべきなのか。

この大きなテーマを1時間に凝縮したお話しは、メモが追い付かないほど多くの学びがあったとの声が私のもとに届いています。

冒頭からしばらくは、田坂さんの人気YouTube「風の夜話」のような静かなソフトな語り口でしたが、話が進むにつれ、徐々に気合の入った営業戦略トークのような語り口になり、日本総研時代を知る私は懐かしさを覚えました。

「学生時代に社会変革の志・使命感をもってもらうこと」が、この教育の根本にある、と語られたのを聴いて、田坂さんご自身の原体験にもとづく強い信念を感じました。

そして、特に「リフレクション(反省)」の技法を体得することが人間として成長し続けるための基本だと語られたのを聴いて、日本総研時代に薫陶を受けた時のことを思い出しました。

この教育機関の対象は、18歳から19歳の学生。この年齢で、今回の講演で語られた教育プログラムを受ける機会のある21世紀アカデメイアの学生の将来が本当に楽しみです。

閉会の辞:秋山和宏さん/MEDユニバーシティ 学長

MED Japan 2023の企画、講師の選定と調整、告知・集客、運営の全てを担った秋山さんによる閉会の挨拶。

内科医である秋山さんは、東葛クリニックみらいの院長という重責を担い、一般社団法人 みんなが みんなで 健康になる、医歩の学校、など多くの活動を行いながら、さらにMED Japanの総合プロデュースもされているのです。

私もこれまでに数多くのイベントプロデュース、運営に携わってきましたので、その経験から秋山さんの大変さ、ご苦労は身に染みてわかります。

しかし、そんなことを一切表に出さず、さわやかな笑顔で対処する秋山さんの姿に共感する方は多いことでしょう。

来年度のMED Japanがますます楽しみになりました。

秋山さん、お疲れさまでした!

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