シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第164回
ストレス社会で注目されるマインドフルネス瞑想
現代はストレス社会だ。あふれる情報やコミュニケーションの複雑化、職場の人間関係、家族の問題などから心的ストレスを抱える人が増えている。
厚労省の「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタル不調により連続1カ月以上休職または退職した労働者がいた事業所の割合が、2012年の8.1%から18年には12.5%に上昇している。
これに加えて新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限や在宅勤務などにより行動が制限され、子どもからお年寄りまで、多くの人が不安や心的ストレスを増加させている。
こうした心的ストレス軽減のため、「マインドフルネス」など心身の内面からストレスに対処する取り組みが注目されている。
マインドフルネスとは「今この瞬間、心の内面に意識を集中すること」を指す。この状態になるための「マインドフルネス瞑想」がストレス軽減や自律神経機能改善などに効果があることが多くの研究によって確認されている。
何もしないとかえって疲れる理由は?
最近の研究によれば、この瞑想を行うと、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳のネットワークの活動が抑えられることがわかっている。実はDMNは「意識的な活動をしていない時」に活発になる神経ネットワークだ。
私たちの脳は、一つの作業に集中している時には作業領域の一つにのみエネルギーを費やすことで対応できる。
ところが、次に何が起きるか分からない場合には、脳はクルマのアイドリング状態のように常にエネルギーを費やさなければならない。しかも、それを脳の複数の作業領域に対して行う必要がある。
だから意識的な活動をしていない時ほど、多くのエネルギーが必要となる。身体の疲れを取るつもりで、ただ、ぼーっとしても脳にとっては休息にならず、ストレスが取れないのはこれが理由だ。
座禅・呼吸教室で本当に瞑想できているか?
こうした背景から最近瞑想を目的とした座禅や呼吸教室などが人気だ。ところが、これらに取り組んでもストレスがとれているかどうかは必ずしも明らかでない。DMNの活動を抑制できているかがわからないためだ。
東北大学と㈱日立ハイテクとが共同出資する㈱NeUが開発したストレスマネージャーというアプリは、この問題を解決する製品だ。このアプリを使うと瞑想している時の自分のDMNの活動状態をタブレット等でモニターできる。
DMNが活性化している時、額の中央部に位置する脳の前頭葉の一部「背内側前頭前野」と、脳の後ろ側で中央後ろ側に位置する部位「後部帯状回」の血流量が増加することが分かっている。
「バイオフィードバック法」で効果的な瞑想を支援
アプリでは超小型の脳センサーで計測可能な背内側前頭前野の血流量変化を計測してDMNの活動状態を評価する。具体的には瞑想中のDMNの活動傾向を上昇・並行・下降の3つのレベルに分析し、異なる色と音で画面に表示する。
この機能により、自分の行っている呼吸の仕方がDMN活動を抑制しているかどうかを確認しながら瞑想できる。こうすることで、これまで何となく感覚的に行っていた呼吸法や瞑想が、心的ストレス解消に効果的かどうかを確認しながら実践できるようになる。
このように自分の身体データを確認しながら自身の行動に反映させる方法を「バイオフィードバック法」という。この手法によりトレーニングを繰り返し行い習慣化することで、ストレス度やストレスホルモンレベルが低下することが東北大学の研究で確認されている。
ウィズコロナ時代は、外出制限や在宅勤務などにより行動が制限され心的ストレスが増える。こうしたストレスを軽減したいと思う人に本製品はお勧めだ。