シルバー産業新聞  6月10日

2004年6月10日  シルバー産業新聞

日本人の平均年齢は42歳。人ならおいの意識も生まれる年齢になった。5歳刻みでみると最も人口の多い年齢層は、1947(昭21)年~49(昭24)年生まれをさす団塊の世代。70年代以降社会の変化の中軸に合ったこの1000万人の人たちは、「平均年齢」をはるかに上回る50代後半に移っている。

本書の趣旨であるこのシニア・団塊市場へのアプローチ手法について、著者は本書の帯でつぎのように言い切っている。「団塊世代というマス・マーケットは存在しない!」と。

なぜなら、「シニア・団塊世代の消費行動は非常に多様であり、その市場は多様なミクロ市場の集合体である」からで、「シニアビジネスの要諦はこの多様性市場への適応力を持つこと」と看破する。

本書で、日本総合研究所で10年間新事業開発に携わった著者は、シニア社会対応が早く市場環境に共通点の多いアメリカ市場の成功事例の分析を通じて、ニーズの在りかとビジネス手法を明らかにしている。

たとえば、いまの飽和市場では新たに不安や不満、不便などの「不」が出現しているとして、肥満に悩む女性のための米フィットネス「カーブス」を紹介する(本紙連載でも取り上げられている)。

事業ポイントの説明後、次のように結ぶ「既存の商品やサービスで市場が飽和しているように見えても、実際にはそれらに満足していない顧客は必ず存在する。課題は、いかにして、このような顧客の潜在的な「不」に気づくかである。日々の営業活動やサービス提供で得られる顧客からのクレーム、不満の声を、単なる顧客のわがままだと思うのか、それとも新しい事業機会だと思うのか。その解釈の仕方が、新しい市場を作り出せるのかどうかの分かれ目になるのである」

本書は、新規ビジネスの指南書として最適であるばかりでなく、消費者としての現在のシニアの実像を知る社会書として読むのも興味深い。

 

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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