昔からあるが旧態依然として「不」が多い市場を狙う

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昔からある不便の例

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第108回

高額でも満足できない商品は狙い目

有望なシニア市場の例のひとつは、需要側が変化しているのに、供給側が旧態依然としていて利用者の「不」が多い市場である。

この市場の代表が補聴器市場だ。補聴器はドイツやデンマークなどからの輸入品が多く、今でも一台35万~50万円という高価格で売られている。にもかかわらず、「雑音が多い」「耳に閉塞感を感じる」「フィッティング感が悪い」「頭痛がする」などの理由から、使用をやめてしまう人が結構多い。

こうした体験を経て一度使用をやめた人は、まず二度と補聴器を買わない。一台50万円もしたのに役に立たなかったというネガティブ体験がそうさせるのだ。売る側からすれば、売れてしまえば目標達成なのだろうが、これではまるで焼畑農業。こうしたことを続けていくと、ブランドイメージの失墜に繋がりかねない。

一方、国産メーカーから一台数万円程度の安価なものも出ているが、それほどよく売れていない。

「聴く」という人間の生存に直結する機能を補う商品では、値段の安さは購買決定要因ではないのだ。違和感なくフィットし、あたかも自分自身の器官のように機能してくれるものであれば、多少高くても売れるのだが、高いだけで満足する商品が少ないのだ。

補聴器という商品の最大の問題点は、しばらく使ってみないと本当に自分にフィットしたものかがわからない点だ。そのためにはまず購入が必要なのだが、それにしては高価過ぎる。百歩譲って高価でも絶対満足できるものであればよいのだが、そうとは限らないのがこの商品の遅れているところだ。最近一部の商品でレンタルできるようになったが、これは一歩前進と言える。

使い勝手の悪いリモコンは莫大な潜在市場

リモコン2

供給側が旧態依然として利用者に不満がある他の例として、家電製品についてくるリモコンがある。どのリモコンもボタンの数が大変多く、配列がまちまちだ。しかも、ボタンのサイズも文字も小さくて、老眼気味の人には操作しづらいものがたくさんある。

地上デジタルテレビひとつを取っても、付属のリモコンはメーカーごとに仕様が異なる。また、同じメーカーであっても、製品ごとにリモコンが異なることもしばしばだ。

恐らく一つの家の中ですら、たくさんのリモコンがあると思うが、シニアにとってはこれらの機能をしっかり理解し、使いこなせるようになるのは大変だろう。

家電製品のリモコンの数は莫大だ。したがって、業界の統一規格を作り、どれを使っても共通に、誰もが簡単に使えるリモコンがあれば、シニア利用者の満足は大きくなるはずだ。日本企業の競争力も上がるだろう。

忘れ去られた固定電話は潜在ヒット商品

携帯電話やスマホはどんどん機能を増やして進化しているが、その反面、固定電話機は進化がほとんど止まっている。携帯電話優位の時代で、もはや固定電話の成長が見込めないと思われているため、メーカーも固定電話の開発・改良には金も力も注がないのだろう。

しかし、シニア層にはまだまだ固定電話派が多いことを忘れてはいけない。

たとえば、携帯電話やスマホでは当たり前の電話帳を簡単に変換できる機能や「らくらくホン」では当たり前の「はっきりボイス」などのすでに存在する使いやすい機能を盛り込むだけで、容易に高付加価値化が図れ、ヒットは間違いなしだと思われる。こんな簡単そうなことが実現していないのが不思議だ。

管理が面倒くさい店固有のポイントカード

いろいろな店で発行しているポイントカードも難物だ。一部の大きいチェーンを除き、小さな商店が発行するものはほとんど紙製だ。主婦の財布を見ると、似たような紙製のカードが何十枚と入っていて、分厚く膨らんでいる。

たとえば、そうしたカードをスマホで読み込ませることで、スマホ一台あれば簡単に利用できるような仕組みがあれば、顧客の利便性は格段に高まるはずだ。

技術的には可能と思うが、これが実現していない理由は、取引規模や企業体力の異なる店舗をまとめてマネジメントする大きな仕組みを作るのに現時点では多大な労力がかかるからだろう。しかし、顧客の利便性を考えれば、遠からずそのような仕組みが出現しても良いはずだ。

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