退職者にとっての「第三の場所」

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高齢者住宅新聞 介護保険に頼らないシニアビジネス成功さらなる12のヒント 第2回

埼玉県朝霞市に住む佐野哲夫さん(66歳)の日課は、毎朝6時半からのラジオ体操。自宅そばの広場で開催するグループに参加している。終了後は近くの「ミヤマ珈琲」で朝食を取る。420円のコーヒーを頼むと厚切りトーストとゆで卵がついてくる。読み放題の新聞・雑誌で情報を仕入れ、体操仲間と情報交換する。

群馬県前橋市に住む小林和樹さん(65歳)は朝9時前に自宅を出る。しかし、行き先は会社ではない。自宅から車で10分ほどのカラオケ「まねきねこ」だ。朝9時から開店していて、午前中は小林さんのような退職者が大勢いる。飲み物や食べ物の持ち込みができるのもシニア層に人気の秘訣だ。

佐野さん、小林さんの行きつけの場所の共通点は自宅(第一の場所)でも職場(第二の場所)でもない「第三の場所」。元々は社会学者のレイ・オルデンバーグが提唱した概念だが、12年前に筆者が拙著「シニアビジネス」「退職者向けの第三の場所」として再定義したものだ。

「退職者のための第三の場所」は時間消費の場所だ。その中身には次の条件が必要だ。を、①リーズナブルな価格でそれなりの食事や喫茶が楽しめる、②新たな友人をつくるきっかけが多い、③生活に役立つ情報が多く得られる、④健康維持、教養・スキル向上のための機会が多い。

12年前は退職者向けの第三の場所としては、老人クラブ、パチンコ屋、図書館程度しかなかった。しかし、サラリーマンには退職後、毎日定期的に行く所がなくなる人が多い。その受け皿としての第三の場所が事業機会となることを私は主張し続けてきた。

「退職者のための第三の場所」の本質は、会社を辞めて毎日行く所のなくなる退職者のための社会的居場所だ。したがって、上記のカラオケや喫茶店・カフェ以外にもいろいろな形態が考えられる。事業者の柔軟な創造性で日本独自の「第三の場所」が生まれることを期待したい。

成功するシニアビジネスの教科書
高齢者住宅新聞

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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