英語教育12月号 

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2004年11月25日  大修館書店「英語教育」12月号 Book Reviews
 
タイトルはビジネス書だが、内容はシニアが社会参画し続けられる仕組みをビジネスの形でどう実現するかのヒントである。

高齢化社会について、特に経済面での展望に関しては、極端な悲観論と極端な楽観論に二極化している。悲観論の方は、少子高齢化にともなう労働力率の低下、その結果、経済活動全体が衰退していくというものである。一方、楽観論の方は、中高年者の貯蓄額の大きさを指摘し、シニアビジネスの無限の可能性を主張している。

評者は、これらの悲観論にも楽観論にも問題があると感じてきた。悲観論は、高齢化が進んでも全人口に対する生産人口の割合は10%くらいしか減少しないこと、また、中高年の就労能力が年々アップしていることを忘れている。楽観論は、高齢者の貯蓄額の分布は4つの峰からなり、極端に高額の一部の層が平均値を押し上げていることを見落としている。何より貯蓄が多少多くとも、収入は加齢にともない減少していくのである。

本書は、長年抱えてきた評者の疑問に見事に答えてくれている。著者の視点は悲観論にも楽観論にも与していない。

序章と終章を含めて12章から成っているが、ランニングタイトルを紹介すると、序章・多様性への応用力、1章・「不」の発見者、2章・商品シーズ編集者、3章・エイジング・スタイリスト、4章・出張駆け込み寺、5章・プライベートコンシェルジェ、6章・第三の場所、7章・知的合宿体験、8章・ナレッジネットワーカー、9章・地縁、10章・ゆるやかな大家族、終章・「多様性市場」で成功する10の鉄則。各章の終わりにはまとめがついて、理解を助けている。

各章のタイトルからも分かるように、本書が一貫して強調しているのは、現代の中高年はひとくくりにできないこと、シニアビジネスの成功の秘訣は・いかにその多様な二一ズに対応できるかにかかっているということである。それを・先進地であるアメリカの事例をシニアの生き方も含めて丁寧に紹介しながら、日本における可能性にまで示唆を与えている。

著者の村田裕之氏はアカデミックな経歴と事業家としての経歴の双方をもっている。エイジズムを克服する視点からシニアビジネスを語りうる能力はその多彩なキャリアの賜物であろう。

評者は、わが国で初めて大学院に学際的な老年学のコースをスタートさせて、2年余り経たところであるが、わが国で特に遅れているのは産業老年学の分野である。本書は、シニアビジネスの直接の関係者のみならず、政策、保健、医療・福祉などのあらゆる分野の方々に、また一般の方々に、高齢化社会の理解のためにぜひ読んでいただきたい良書である。
(桜美林大学大学院教授 柴田博)

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