民泊で収入を得る米国のシニア 日本でも可能性

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シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第111回

自宅をB&Bにして収入を得る米国のシニア

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先日会合で米国に出張した際、ホテルではなくB&Bに宿泊する体験をした。B&BとはBed & Breakfastの略で、イギリスや北米など英語圏各国における小規模な宿泊施設を言う。宿泊と朝食の提供を料金に含み、比較的低価格で利用できる。

私が泊ったのは、ペンシルバニア州ランカスターのホーリンガーハウスというB&Bだ。もともと民家だったものを改造し、一階にはリビングルームが3つ、ダイニングルーム、キッチンがある。

部屋の内装は19世紀ヨーロッパの古式ゆかしいもので、ここで結婚式を挙げる人もいる。二階に大きなベッドルームが5つあり、どの部屋にもバスルームが付いていた。1階の外には庭を臨むスペースがあり、静かな森の中の邸宅といった感じだった。

B&Bなので毎日朝食が提供される。朝食は担当の女性による手作りで、パンケーキ、キッシュ、レモン味のヨーグルト、季節のフルーツなどが提供され、通常のホテルでのものよりもはるかに家庭的な雰囲気が味わえた。

今回は私の友人達との宿泊だったので費用をシェアしたが、3泊で一人一泊126.1ドル(約12,600円)だった。翌日そこから車で1時間のホテルに泊まったが、朝食なしで一泊17,509円だったので、B&Bはかなり安いと言える。しかも単に安いだけでなく、米国の家庭生活の雰囲気を味わえることが私のような外国人には価値がある。

ICTと決済サービスの普及でシニアでも簡単に決済

これだけでも十分楽しかったのだが、私が興味を惹かれたのはB&Bでの支払いの瞬間である。支払いをしたいと言うと担当の女性がiPadを持参し、そのイヤホンジャックに小さな三角形のカードリーダーを差し込み、そこにクレジットカードを通して支払処理・決済をしたのだ。(この仕組みはPay Pal と言う決済サービスである。)

領収書はiPadの画面に入力したメールアドレスに届くようになっている。紙の領収書が必要ならその場で発行してくれる。

私はこのシーンが大変印象に残った。なぜなら、日本なら通常こうしたクレジットカード決済は、専用端末のある商業店舗でしか見ないからだ。それ以外は一部タクシーの中か、宅配業者が自宅に来て小型専用端末を使って行う程度だ。

しかし、米国では60代前半の一般女性が、自宅でiPadと小型三角端末でいとも簡単にクレジットカード決済をしている。そういう習慣がシニア層にまで浸透し日常化していることに米国の先進性を感じた。

ちなみに今回宿泊したB&Bの所有者は70代の女性で病気のために別の施設に入っていた。私たちの面倒を見てくれた女性は、実はこのB&Bのすぐそばに住んでいた所有者の友人だったのだ。

日本でも60代、70代になるといろいろな理由で同居家族が減り、一軒家を持て余す人が多くなる。また、病気なって入院したり、要介護状態になったりして自宅をそのままにして病院や介護施設に移り住むケースも多い。そのような場合に、自分の信頼できる人が身近にいれば今回のように空き家を第三者の宿泊施設に転用して収入を得ることができるだろう。

最近話題のAirbnb(エアビーアンドビー)は、ネットを使ってB&Bのホストと宿泊者とを仲介する仕組みで、これを使うと宿泊者からの集金を代行してくれるため、前述の仕組みは不要となる。ただし、3%の決済手数料に加えて、部屋代の5~12%を料金に上乗せされる。これを嫌う人は今回の例のように独自に運営する。

旅館業からの反発の多い民泊だが、政府は2020年の東京オリンピックまでに訪日観光客数を年4000万人に増やす目標を掲げており、民泊新法を制定して、今年度末には解禁する見通しだ。これを機会に日本でもシニアによる新たな収入源確保手段としての「シニアB&B」の普及を期待したい。

成功するシニアビジネスの教科書
シルバー産業新聞社

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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