Eldercare Innovation Awards:日本企業がもっと上位に入賞するには?

国際活動

6th Asia Pacific Eldercare Innovation Awards 2018

オリックスリビング、SOMPOホールディングスが部門最優秀賞を受賞

5月16日夜、シンガポールMarina Bay Sandsでアジア太平洋高齢者ケア革新アワード(6th Asia Pacific Eldercare Innovation Awards)の授賞式が開催されました。

日本企業ではオリックスリビング株式会社がFACILITY OF THE YEAR – AGEING-IN-PLACE部門、SOMPOホールディングス株式会社がBEST PRODUCT TO SUPPORT AGEING-IN-PLACE – WELLNESS部門で最優秀賞を受賞しました。

オリックスリビングは、京都の住環境とマッチさせた2つの老人ホームで健康状態に応じて住み方を選択できる点、入居者自身が具体的な目標設定をしたうえでリハビリ等を行う「目標達成型ケア(Goal-oriented care)」の取り組みが高く評価されました。

特に後者では入居時に自力で歩けなかった高齢女性が、何年も行けなかった亡き夫の墓に自力で行くという目標設定をしたところ、リハビリに取り組む意欲が増し、ついに自力で行けるまでに状態が回復した物語が共感を得られました。

一方、SOMPOホールディングスは、自社の高齢者住宅向けの食事「デリパック」と在宅利用者向けの食事「食楽膳」が受賞対象。

どちらも栄養バランスと和食のおいしさを吟味しつつ、食事を準備する側の手間を極力抑え、かつ一食当たり300円という価格を実現した点が高く評価されました。

また、BEST HOME CARE OPERATOR部門で訪問歯科を取り上げた医療法人社団 悠翔会、BEST SILVER ARCHITECTURE部門で6月開設予定の都市型多機能住宅アンダンチを取り上げた株式会社 未来企画がファイナリストとして表彰されました。

「内容力」だけでなく「英語による適切なプレゼン力」が不可欠となった

以下、私が今回のアワード選考に審査員として参加した立場で総括したいと思います。

まず、5月14日に審査員向けにファイナリストによるプレゼンテーションが開催されました。今回より各国の審査員が部門ごとに審査する形態となりました。

このため、日本人プレゼンターの何人かは日本人審査員がいない状況でプレゼンしなければなりませんでした。しかし、これが国際舞台における本来の状況と言ってもよいでしょう。

従来、日本企業のプレゼンは、運営している高齢者住宅や介護施設の「内容力」で優っており、これで評価される傾向にありました。つまり、言葉のハンデを内容でカバーできたのです。

しかし、これからは日本企業がこのアワードで受賞するには、「内容力」だけでなく「英語による適切なプレゼン力」が不可欠となったことを改めて感じました。

原稿の棒読みでは通用せず 英語でのプレゼンテーション力が不可欠

特に後者は日本人によく見られる原稿の棒読みでは通用せず、経営や介護に対するしっかりした理念とそれを示す具体的なファクトをわかりやすく示すことと、イメージを膨らませるビジュアルと効果的な伝え方の工夫が求められます。

また、今回は主要8部門のみプレゼン20分・質疑応答に10分以上、その他部門はトータル10分ですが日本人プレゼンターにはプラス10分の時間が与えられました。

この際に重要だったのは後半の質疑です。審査員がチェックのために行う質問に的確に英語で答えるスキルが不可欠でした。

次にファイナリスト・プレゼンで評価された主要8部門の上位2社が、16日のコンファレンスで聴衆に向かってプレゼンする機会がありました。こちらは持ち時間8分という限られた時間で何を、どう、説明するのかが評価の分かれ道でした。

6回目を迎えた今年はオーストラリアからのノミネートが増えたのが特徴です。彼らは英語がネイティブであり、シンガポールや香港と同じ旧大英帝国連邦である利点を生かして存在感を増していました。

相手の立場でわかりやすい説明を、伝えたいという強い熱意を行動に示す

全体を通じて印象に残ったプレゼンの共通点は、(1)相手の立場でわかりやすい説明をしていること、(2)相手にこの商品の優れた点を何としても伝えたいという強い熱意を行動に示していることです。

残念ながら最優秀賞を逃した方は、ぜひ、このことを心に留めて、次の機会に生かして頂ければと思います。

また、今年度は日本企業のノミネートが少なかったのが残念ですが、参加した日本企業の方は異口同音に「日本の外から自社事業や介護事業の在り方を見ることができる貴重な機会で刺激を受けた」と話しています。

国内のことだけで視野狭窄に陥らないように来年度はもっと多くの日本企業に参加してほしいと思いました。

なお、授賞式の最初にGlobal Ageing Influencersの表彰式があり、日本からはオリックスリビングの森川社長、悠翔会の佐々木理事長、私の3人が名誉ゲストの方から表彰されました。佐々木理事長は診察のために帰国したので、アシスタントの鈴木希望さんが代理で授与されました。

いつも感じることですが、この授賞式全体が参加型のエンターテインメントになっていて、会を盛り上げるショーアップの上手さは日本人には学ぶべき点がたくさんあります。これを知るだけでも参加する価値があるかもしれません。

日本から参加の皆さん、お疲れさまでした!また、自分の留守を守ってくれたスタッフの皆さん、ありがとう!

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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