中高年からの筋トレ入門|転倒予防・サルコペニア対策・健康寿命を伸...

秘訣その2 筋トレをする

筋肉は何もしないと加齢とともに落ちていく

筋トレ(筋肉トレーニング)自立して活動できるために次に重要なのは、筋トレ(筋肉トレーニング)を行うことです。

私たちの体は、20代を過ぎた頃から、普通に生活しているだけだと、加齢とともに筋肉が少しずつ落ちていきます。

体の筋肉量は20代をピークに、その後、年齢とともに減少していくことが知られています。特に下半身の筋肉は落ちやすく、歩く力や立ち上がる力に影響します。

また、筋肉は上半身よりも下半身のほうが落ちやすく、男性よりも女性のほうが筋力低下の影響を受けやすい傾向があります。

このために、中年期を過ぎたら、意識して筋トレを行わないと、特に女性は下半身細りになります。

細くなるなら嬉しいわ、と思うかもしれませんが、単に細くなればよいわけではありません。

なぜなら、体重が同じで筋肉が減ったら、少ない筋肉で同じ体重を支えなければならないからです。若いときよりも体重が増えているとしたら、さらに多くの体重を支えることになります。

これが、膝や腰などへの負担を大きくします。

ウォーキングだけでは「体幹部」の筋肉はつかない

体幹部の筋肉ところで、先にウォーキングがよいという話をしました。

ウォーキングは有酸素運動としては確かによいのですが、ウォーキングだけでは、転倒・骨折予防に有効な腹筋・背筋を含む「体幹部」の筋肉はあまりつきません。

また、歩行機能の面で特に重要なのは「大腰筋」という筋肉です。

これは上半身と下半身をつないでいる、骨に近いところにある筋肉で、外からは見えません。

私たちは、健康な場合、歩くときに無意識にかかとから地面につけて歩きます。ところが、大腰筋が弱ってくると、かかとからではなく、つま先から地面につけて、すり足のように歩くようになります。

大腰筋が弱ると、道端に段差や石ころ、溝などがあると、つまずいて転倒しやすくなります。

特に高齢期に転倒すると、大腿骨を骨折して入院し、そのまま要介護・寝たきりになる可能性が高くなります。

サルコペニアを防ぐには下半身と体幹部が重要

また、太腿前の大腿四頭筋、お尻の大臀筋、腹筋群、背筋群といった大きな筋肉は、立ったり歩いたりするために必要な部分ですが、加齢の影響を受けやすい部分です。

この部分を鍛えずにいると、「サルコペニア」になり、日常生活に不具合が生じてくることがあります。

サルコペニアとは、加齢に伴って筋肉量や筋力が低下し、身体機能が落ちていく状態のことです。筋トレを行うことで、サルコペニアの進行を抑えることができます。

以上が、先にお話しした転倒・骨折のリスクを大きくしてしまう背景です。

したがって、こうした事態を避けるには、筋トレで体幹部や下肢の筋肉を鍛えることが重要なのです。

中高年にとっての筋トレの4つの効用

ここで改めて、本書の対象である中高年の方にとっての筋トレの効用を整理しておきましょう。

厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」でも、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。もちろん、体力や持病の有無によって無理のない範囲で行うことが大切です。

効用1

膝や腰の痛みの軽減・解消につながる

膝や腰の痛みの軽減・解消につながる

加齢に伴い、筋力や骨密度が低下します。

少ない筋力で膝や腰を動かすと、骨密度が低下して弱った骨に多くの負担が加わり、痛みを発生・増加させます。

筋トレによって筋肉量が増えると、体を支える力が強くなります。その結果、骨に加わる負担が軽減され、痛みも軽減されます。

効用2

太りにくくなる

太りにくくなる

筋トレをすると筋肉が増えます。筋肉が増えると「基礎代謝」が増えます。

基礎代謝とは、生命維持のために常に消費されるエネルギーのことです。

これが増えると、太りにくい体になります。

減量したい場合は、有酸素運動で体内の脂肪を燃焼させることに加えて、筋トレで筋肉を増やすことが効果的です。

効用3

冷え性や体のコリが解消される

冷え性や体のコリが解消される

筋トレで継続的に筋肉を動かすと、毛細血管が発達し、全身の血行がよくなります。

体のすみずみまで血液が運ばれるようになると、それまで冷えていた部分も温まり、体がポカポカしてくる感覚を得られます。

また、コリで固まっていた部分も動きやすくなります。

効用4

疲労回復力の向上につながる

疲労回復力の向上につながる

筋トレによって「成長ホルモン」が脳下垂体前葉というところから分泌されやすくなります。

成長ホルモンは体の細胞の合成を促し、骨や筋肉を作るだけでなく、脳の疲労回復や免疫力の向上にも役立ちます。

成長ホルモンの分泌は、一般に加齢とともに徐々に減っていき、高齢者になると少なくなります。

しかし、筋トレを行うと、年齢を問わず筋肉修復のために成長ホルモンの分泌が促されます。

これら以外にも、筋トレによる効用はさまざまあります。

しかし、中高年にとっては、上述の4つが最重要の効用です。

中高年女性に支持されるカーブスとは?

カーブス 筋トレの重要性は十分おわかりいただけたと思います。

「すでにスポーツジムに通っている」という方は、ぜひ続けてください。

一方、まだ筋トレをきちんと行ったことのない方は、ぜひこの機会に始めてみてください。

ここでは、年配の方でも気軽にできる筋トレの例として、「カーブス」というプログラムをご紹介します。

筋トレというと、一般に年配の方は「私にはちょっと……」と尻込みされることが多いのですが、このプログラムには、そうした年配の方でも楽しく継続しやすい仕組みが、いろいろと工夫されています。

米国生まれのカーブスを日本で最初に紹介したのが実は私なのです。

カーブスは2005年に日本で1号店をオープンしてから20年余りが経ちました。現在では、会員数は91.5万人、国内店舗数も約2,000店舗となっています。

これだけ多くの中高年女性が利用している筋トレプログラムは、ほかには見られません。

有酸素運動・筋トレ・ストレッチを30分で行える

筋トレ30分カーブスの優れている点は、前述の有酸素運動と筋トレ、そしてストレッチを合わせて、たった30分で完結できることです。

店舗では、サーキット型に並べられた12種類の異なった筋トレマシンと、ボードを用いてトレーニングを行います。

例えば、まず一つの器具で上半身の筋トレを行います。30秒後に次のボードに移動します。この際、サーキットに参加している全員が一斉に時計回りに移動します。

上半身筋トレの次は、ボードの上で有酸素運動を行います。

30秒後に次の器具に移動して、今度は下半身の筋トレを行います。

以降、同様の運動を繰り返しながらサーキットを回ります。途中で心拍数を測って、運動負荷が適切かどうかを確認しながら行います。

実際にやってみるとよくわかりますが、見た目よりも運動負荷が大きいです。単位時間当たりの運動密度が濃くなるよう設計されているからです。

すべての運動プログラム終了後に、サーキットの外でストレッチを行います。

ここまでを、わずか30分で行います。

中高年女性が続けやすい3つの特長

さらに、中高年の女性に受けている理由に、3つの特長があります。

1

女性専用アイコン

女性専用であること

女性の中には、男性が運動したあとに器具についた汗に触れたくない、運動している姿を男性に見られたくない、といった方もいます。

そうした方にとって、女性専用であることは通いやすさにつながります。

2

時間の節約アイコン

化粧を気にせず通いやすいこと

スポーツジムに通う女性には、「これからジムに行くのでお化粧しなくちゃ」とメークアップしてから出かける人が少なくありません。

化粧を気にせず通えると、こうした時間が節約でき、忙しい主婦も家事や買い物の合間に通いやすくなります。

実際、普段着に近い服装で、自転車で店舗にやってくる人も大勢います。

3

鏡がないアイコン

鏡がないこと

鏡があると、運動している自分の姿や体型が気になってしまう方もいます。

だから、そうした心理的な負担を減らす工夫がされています。

現在も、カーブスは50代以上の女性を中心に、幅広い年代の方に利用されています。80代以上の方も大勢通っています。

私は以前、アメリカで100歳を超えても通ってくる女性にお会いしました。

たとえ100歳の女性でも、毎日続けて来られるほど継続しやすい仕組みになっていることに注目です。

要介護の人が運動で健康を取り戻す例もある

元気を取り戻す女性日本でのサービスが始まってから20年以上の年月が経ちました。

近年興味深いのは、サービス開始当初には予想もしなかった事例が現れてきたことです。

それは、要介護認定を受けて当初は介護サービスを使ったものの、それをやめてカーブスに来て、健康を取り戻していく例があることです。

睦子さん(当時58歳)のお母さん、幸子さん(当時87歳)は、以前は腰が大きく曲がり、要介護2の認定を受けてデイサービスに通っていました。

しかし、体の状態はいっこうに改善しませんでした。

東京に住む睦子さんは、福岡の実家に帰省するたびに老人ホームの内覧に同行していました。幸子さんが近い将来、自宅での生活が困難になると思っていたからです。

ある日、睦子さんは自分が通っているカーブスが、実家のそばにできることを知り、そこに通うよう幸子さんに勧めました。

しかし、幸子さんは通い始めた頃、体が直角に曲がった状態で、重いリュックを背負って上半身を反らさなければ顔を上げられませんでした。

実家が山の中にあったため、最寄り店舗に通うためにバスを乗り継いで1時間半通う必要がありました。

ところが、自宅から最寄りバス停まで1キロ弱の距離でしたが、幸子さんの当初の状態では徒歩で45分もかかったのです。

つまり、自宅から最寄り店舗まで2時間15分もかかったのです。

店に通うだけで片道2時間以上もかかったら、普通は通わないでしょう。

しかし、幸子さんは知り合いから大勢の人の前で「えらく腰曲がったね、なんでそんなに」と心ない言葉を浴びせられ、悔しい思いをしていました。

その悔しい体験が「以前のように健康になりたい」という強い意欲を幸子さんに持たせ続け、店に通わせたのです。

通い始めてから2カ月後、幸子さんは自宅から最寄りバス停まで、一度も休憩せずに15分で歩けるようになりました。

さらに、曲がっていた背中も徐々にシャンとして、移動もスムーズにできるようになりました。

また、以前は体が曲がっていて胃が圧迫され、食事も小鳥の餌程度しか食べられなかったのが、食欲が出るようになり、以前よりも多く食べられるようになりました。

姿勢がよくなったことに加え、筋肉が増えて基礎代謝が増えたからです。

要介護2で体が直角に曲がっていたときとは、まるで別人のようになりました。

なぜ、要介護の人がカーブスで元気になるのか?

今、全国の店舗では、要介護認定されたにもかかわらず、このような「医療・介護」以外の方法で、健康を取り戻す事例が生まれています。

こうした状況は、サービス開始当初には予想もしなかった「嬉しい想定外」です。

さて、ここで一つの疑問が浮かびます。

なぜ、デイサービスで改善しなかった要介護・要支援の人たちが、カーブスにやってくると元気になるのでしょうか。

これには、いくつか理由が考えられます。

第一に、筋トレと有酸素運動を集中的に行うことです。

通常のデイサービスでは、カーブスで行う単位時間当たりの密度の濃い筋トレと有酸素運動は行いません。

機能訓練型デイであれば、マシントレーニングなどもありますが、そもそもこのタイプのデイはまだ少なく、利用者の自宅最寄りにない場合もあります。

第二に、楽しく継続できる工夫が多いことです。

デイサービスでの機能訓練は、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションが中心であり、多くの場合、やっていて楽しいものではありません。

これに対してカーブスでは、入店すると名前で呼ばれ、明るい雰囲気の中で運動できます。店にはリズミカルな音楽が流れ、元気で親しみやすいコーチが、利用者の状況に合わせて指導してくれます。

こうした積み重ねで、利用者は楽しく筋トレを継続できるのです。

第三に、人生に前向きな人が多く集まっていることです。

カーブスには、前向きに人生を歩みたいという意志があり、未来に対してポジティブないきいきとした女性が数多く集まっています。

こうした場に通うことで、周りの人たちから刺激を受け、肉体面だけでなく、精神面でもやる気が出て元気になります。

こういう「場の空気感」が人の気持ちを大きく変え、社会性を高めるのです。

4週間のサーキット運動トレーニングで脳機能も改善する

ここまでで、カーブスのメリットは十分おわかりいただけたと思います。

加えて、こうしたサーキット運動トレーニングは、実は脳機能改善にも有効です。

東北大学の野内類准教授(当時)らの研究グループは、高齢者64人を対象に無作為比較対照試験を行った結果、サーキット運動トレーニングを4週間行うことで、実行機能、エピソード記憶、処理速度など、広範囲な認知機能を改善することを明らかにしています。

ちなみに無作為比較対照試験は、医療分野で用いられる根拠の質の高い研究手法です。

この研究以前の先行研究によれば、サーキット運動トレーニングを42週間継続することで記憶力が向上するという報告もありました。

しかし、先行研究では、

  1. もっと短期間でも認知機能は向上するのか
  2. 記憶力以外の認知機能は向上するのか

については明らかではありませんでした。

本研究は、これらの不明点を解明するために実施したものです。

研究参加者は、地域タウン誌の広告で募集した、精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な高齢者64人。

サーキット運動トレーニングを実施する「介入群」32名と、実施しない「非介入群」32名とに分け、無作為比較対照試験を4週間実施しました。

トレーニング開始前・終了後に、介入群・非介入群に対して認知機能検査を実施し、認知機能の変化を計測しました。

これらの試験の結果、介入群が非介入群よりも、実行機能、エピソード記憶、処理速度の認知機能において改善することを見出しました。

この研究より、高齢者でも4週間のサーキット運動トレーニングで、広範囲な認知機能が改善することが判明しました。

4週間という短期間でも広範囲な認知機能が改善することを見出した点、および高齢者を対象とした無作為比較対照試験である点から、従来にない研究成果といえます。

続けやすい筋トレプログラムを活用する

シニア向けプログラム近年、高齢者でも利用しやすい筋トレプログラムが増えてきました。

例えば、自治体が主催する転倒予防体操や健康運動教室、民間のフィットネスプログラムなど、さまざまな選択肢があります。

こうした自治体主催の筋トレプログラムは、自治体によって内容が異なり、有料だったり無料だったりします。また、自治体内で会場数が限られている場合も多いようです。

一般に高齢になるほど、運動するのが億劫になります。

ウォーキングまでは実行できても、筋トレとなると敷居が高いと感じる人は多いようです。

また、勇気を振り絞ってスポーツジムに通い始めても、いろいろな理由によって途中で挫折する人も少なくありません。

大切なことは、いかに継続するかです。

継続するためには、ある程度自分の意志が必要ですが、それ以上に「継続しやすい環境」があることが重要です。

なんでもいいので、自分に適しているところ、続けやすいと思う方法を見つけてください。

大切なのは、人生100年時代の「金融外資産」である筋肉を、維持・増強することです。

筋肉は、将来の自分を支えてくれる大切な資産です。

まずは無理のない範囲で、週に数回、身体を動かすことから始めてみてください。
Faq

よくある質問

Q女性が高齢になるにつれ転倒・骨折が増える理由として、筋肉の衰え以外にどんな要因がありますか
A

「骨粗しょう症」で骨そのものの強度が落ちること、栄養不足で皮下組織が薄くなり、クッション機能が減ることが挙げられます。

骨粗しょう症の有病率は加齢とともに上昇し、80歳代の女性では約5割が骨粗しょう症と言われています。日本における骨粗しょう症の有病者数は1,300万人、うち女性だけで約1,000万人と見積もられています。

病院への受診率は低く、治療を受けている人は全体の約20%しかいません。一度骨折をして病院で治療を受けたにもかかわらず、骨粗しょう症の治療をしなかった場合、骨折を繰り返すことが多いです。

Q転倒・骨折しやすい場所はどういうところですか
A

2015年(平成27年)版高齢社会白書によれば、77.1%が自分の家の中です。転倒しやすい場所は、階段、浴室・トイレ、散らかった部屋です。

Q筋トレは週に何回するのが最も効果的ですか
A

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」によれば、週2~3回の筋力トレーニングを推奨しています。

スマート・エイジングについてより深く知りたい方は、村田裕之の講演会をご覧ください。講演会では、さらに興味深い動画やグラフをお見せして、
秘訣を実践を交えてわかりやすくお話ししています。