科学的に設計されている脳トレの極意 中高年から認知機能を保つため...

秘訣その3 脳トレをする

歳をとると涙もろくなるのは感受性が強まったせい?

中高年になると、涙もろくなったと訴える方が増えます。

「朝のテレビドラマを観ると感情移入しやすいのか、必ず涙ぐむの」

山本聡子さん(66歳、仮称)/埼玉県川越市・主婦

「先日映画を観たら冒頭から涙があふれ出て、最後まで止まらなかった。歳をとったら感受性が豊かになったみたい」

川田敏夫さん(55歳、仮称)/神奈川県横浜市・会社員

しかし、実は歳をとると涙もろくなるのは、感情移入しやすくなったのでも、感受性が豊かになったのでもありません。

大脳中枢の機能低下が、その理由の一つと考えられています。

高齢者だけでなく、50代からも似た話が出るのは意外に思えるかもしれません。しかし、大脳の機能低下は20代以降から少しずつ始まっています。

私たちの身体では、大脳の前頭葉にある「背外側前頭前野」と呼ばれる部位が、脳全体の司令塔のような役割を担っています。

この部位は、記憶や学習、行動や感情の制御に深く関わっています。

涙もろくなったのは、この部位が担っている感情の「抑制機能」が低下したためと考えられるのです。

なぜ、キレる高齢者が社会問題になるのか?

キレる高齢者ここ数年、「キレる高齢者」という言葉を耳にすることがあります。

携帯電話販売店で若い店員に突然怒鳴り始めたり、駅や病院で暴言を吐いたりする高齢者を見かけることがあります。

もちろん、すべての高齢者がそうだという話ではありません。

また、直近の犯罪白書を見ると、高齢者の刑法犯検挙人員は平成20年をピークに、その後は減少傾向にあります。ただし、刑法犯検挙人員に占める高齢者の割合は、令和6年でも2割を超えており、高齢者の犯罪やトラブルが社会的に注目されやすい状況は続いています。

こうした「感情を抑えられない」状態にも、背外側前頭前野の機能低下が関係していると考えられます。

この部位の中核機能の一つに「作動記憶」、つまりワーキングメモリーがあります。

これは、短時間に情報を保持し、処理する能力のことです。パソコンでいえば、RAM、つまりランダム・アクセス・メモリーにあたります。

作動記憶の容量とは、「作業机の広さ」と考えてください。

作業机が作業内容に対して十分広いと、効率よく作業ができます。ところが、作業机が狭いと、作業する際に机上の書類などを逐次移動しなければならず、作業効率が下がります。

問題は、この作業机の広さ、つまり作動記憶の容量が、加齢とともに減少していくことです。

これが、感情の抑制機能を低下させる原因の一つと考えられています。

会話に「あれ」「これ」「それ」が増えたらご用心

指示代名詞が増えたらご用心ですまた、会話のなかで「あれ」「これ」「それ」といった指示代名詞が増えたらご用心です。

誰かに挨拶されても、
「あの人、誰だっけ?」
と名前が出てこない。

会話のなかで、
「あの映画のヒロインの女優さん、誰だっけ? えーっと、あの有名な人よ」
といった具合に、俳優や歌手の名前などの固有名詞がぱっと思い出せないのも同様です。

これらの「もの忘れ」は、過去に経験した記憶を、脳の貯蔵庫から取り出す能力の低下によるものです。

一方、自分の行動や新しい情報を、脳に記憶として書き込むのが苦手になることによるもの忘れもあります。

例えば、何か考えごとをしている最中にスマホにメールが飛び込んできて、その返信をしたあと、
「さっきまで何やってたんだっけ?」
と忘れてしまうような場合です。

これは、記憶の書き込みをつかさどる背外側前頭前野の機能低下の症状と考えられます。

特に高齢期になると、一般に新しいことをしたり、覚えたりするのが苦手になります。

例えば、省エネのために家電製品を買い替えようとしたが、あまりの機能の多さに気持ちが萎えて、買い替え自体が億劫になる、といった具合です。

記憶の書き込み機能の低下に、意欲の低下が加わった状態です。

パソコンを使用したことのない高齢者にスマホの利用を勧めても、なかなか利用しようとしないのは、こうした理由が背景にあります。

ちなみに、スマホはいわば超小型パソコンです。逆に高齢の方でも、パソコン利用に慣れている人はスマホ利用にあまり抵抗がありません。

脳機能は20歳を過ぎると加齢とともに衰える

脳機能低下脳の働きの低下は、中年期以降に生じると信じている方がほとんどだと思いますが、実際はそうではありません。

認知機能に関連する世界中で行われた心理学的検査の結果をまとめた研究を見ると、ある事実が浮かび上がってきます。

語彙などの知識を問う心理学検査の成績を総合すると、20代から徐々に成績が向上し、60代から70代で最大値を示し、その後ゆっくりと低下していきます。

人生経験が豊かになるにつれて、知識や知恵も豊かになるという当たり前のことが、ちゃんと点数に表れています。

語彙などの知識は、脳の頭頂連合野や側頭連合野に記憶として蓄えられます。この点からいえば、脳の機能は人生の晩年に向かって向上しているともいえます。

ところが、背外側前頭前野の機能を調べる心理学検査の成績を見ると、20歳頃から成績は直線的に低下していきます。

中年期以降に急に下り坂になるのではなく、脳の器質的な成長が終わる20歳頃から、少しずつ機能低下が始まっているのです。

自分のしていた行動や作業をふと忘れてしまうタイプのもの忘れは、前述のとおり、背外側前頭前野の機能低下を反映していると考えられます。

比較的若いうちからこうした症状が見られるのは、この機能低下が20歳を過ぎると始まることに起因していると思われます。

興味深いことに、どちらの検査も、すべての年代の人の成績を平均すると、40代半ばの値と一致することもわかりました。

この事実は、40代半ばまではそれまでの経験でカバーできるので、脳機能の低下をそれほど自覚することがない。ところが、40代後半以降は背外側前頭前野の機能低下の影響のほうが強くなるため、ごまかしがきかなくなる。

したがって、中年期以降に脳機能の低下を強く自覚するようになることを示唆するものです。

脳トレには「処理速度」と「処理容量」の2種類ある

こうした背外側前頭前野機能の低下を改善し、機能向上を目指すのが「脳のトレーニング」、つまり脳トレです。

川島隆太教授によれば、これまでの脳トレには、情報の「処理速度」と「処理容量」の2種類の訓練があります。

背外側前頭前野の機能は、パソコンに例えると、情報処理を担うCPU、つまり中央演算処理装置と、情報を自由に読み書きできるRAM、つまりランダム・アクセス・メモリーになります。

CPU

情報処理速度訓練

CPUこのCPUの性能を向上するのが「情報処理速度訓練」です。

RAM

情報処理容量訓練

RAM一方、RAMの容量を拡大する、つまり作動記憶容量を拡大するのが「情報処理容量訓練」です。

ちなみに、パソコンのHDDやSSDなどのデータ記憶装置にあたるのが、脳では側頭連合野になります。

脳トレ商品はどのように広がったのか

東北大学では、川島隆太教授を中心に多くの民間企業との産学連携で、この2種類の脳トレを商品化してきました。

「情報処理速度訓練」の代表的商品は、任天堂DS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」と、その続編の「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」です。

一方、「情報処理容量訓練」、つまり作動記憶容量を増やす脳トレの代表的商品は、任天堂3DS用ソフト「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」、通称「鬼トレ」です。

先に述べた「感情の抑制機能の低下」「記憶の書き込み機能の低下」を食い止めるには、このような作動記憶トレーニングが有効だと考えられます。

興味深いことに、作動記憶トレーニングを続けると、これらの改善に加えて、脳の実行機能、予測や判断力、集中力も向上し、仕事や勉強の効率が上がったり、家事がスピードアップしたり、スポーツが上達したり、さまざまな効果が期待されます。

中年期を過ぎた皆さんは、近い将来に感情を抑えにくい高齢者になりたくなければ、今から作動記憶容量拡大の脳トレを始めることをお勧めします。

なお、DS版の後継機としてNintendo Switchによる「脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング」が発売されています。これには前述の2種類の脳トレプログラムが多数用意されています。

これらのシリーズは海外でも販売され、合算で世界累計3800万本以上という大ヒット商品となりました。

ニューロフィードバックを応用した新しい脳トレ

ニューロフィードバックここまで、脳トレには2種類あると説明してきました。

さらに、東北大学の研究をもとに新たな手法による脳トレが登場しています。

それが「ニューロフィードバック型脳トレ」です。

ニューロフィードバックとは、自分の脳の活動状況をリアルタイムにモニターして、意識的に脳の活動を調節する手法のことです。

自分の生体情報をモニターして、自分の身体活動を調節する「バイオフィードバック」という手法は以前からありました。その脳神経、つまりニューロ活動版がニューロフィードバックです。

ニューロフィードバックは、従来はうつ病や注意欠陥・多動性障害、ADHDといった精神疾患の研究に超小型使われてきました。そのため用途は医療・研究分野が中心でしたが、東北大学の研究をもとに、脳トレにも応用されるようになりました。

ニューロフィードバック型脳トレでは、超小型NIRSという装置とスマホまたはタブレットを使います。

NIRSは近赤外光計測装置のことで、近赤外光を活用して大脳の活動状況をリアルタイムに計測する装置です。

手のひらを太陽に透かすと赤く透けて見えますが、これは近赤外光が血管を流れる血液中の赤血球に当たり、反射しているからです。

NIRSはこの原理を使い、脳の神経細胞近くの血流の変化を見ます。

脳のある部位が賦活、つまり活性化すると、その部位の神経細胞周辺の血流が活発になります。この血流の変化を計測することで、その部位の神経細胞の賦活状態を評価します。

この原理は日本人研究者が考えたもので、NIRSの技術は日本で発展してきた分野です。

NIRSは日常に近い環境で脳活動を計測できる

メリットCTのようにX線を使わないため、放射線被ばくがないことです。

また、CTや機能的MRIに比べて小型化しやすく、病院や研究施設だけでなく、日常に近い生活空間で計測できることも大きなメリットです。

デメリットNIRSのデメリットは、脳の表面に近い部分しか計測できないことです。

このため、NIRSで計測する部位は、大脳の前頭葉や側頭葉といった部位が中心になります。

これらの部位は、脳の中で高次な機能を担っています。

特に前頭葉の最前部にある前頭前野が、脳全体の司令塔となり、記憶や学習、行動や感情を制御しています。

NIRSが主に計測対象とするのは、この前頭前野です。

余談ですが、認知症の方の脳をNIRSで見ると、前頭前野の働きが低下していることが見られます。

そのため認知症は、脳科学的には前頭前野が機能していない状態のことをいいます。

なぜ、ニューロフィードバックで効果が期待できるのか?

NIRS従来のNIRSは、頭に多くのセンサーが取り付けられ、そこから多数のケーブルが延び、それがそばにある計測装置につながっている大がかりなもので、実験室の中で使われることが中心でした。

その不便をなくすために、東北大学と日立ハイテクノロジーズ(現 日立ハイテク)との産学連携で改良に取り組み、ケーブルをなくして小型化したNIRSの開発が進められました。

その後、2017年8月には、東北大学の知見と日立グループの携帯型脳計測技術を融合した脳科学ベンチャーとして、株式会社NeUが設立されました。

現在では、携帯型脳活動計測装置HOT-2000など、日常に近い環境で脳活動を計測できるウェアラブルなNIRSも提供されています。

NIRSを頭に装着し、スマホなどにインストールした脳トレのプログラムを行うと、前頭前野の活動の様子が画面に表示され、活性化レベルをリアルタイムでモニターできます。

それを見ながら、脳活動をさらに活性化させようと思い、意識的に工夫する。

そうすると、脳がさらに活性化してきます。

この仕組みによって、より高い認知機能向上効果が期待できるのが、ニューロフィードバック型脳トレの特長です。

これを継続して行っていくと、認知機能の維持・向上が期待できることがわかっています。

若い人でも、50歳過ぎの人でも、しっかりと手順を踏んで行えば効果が期待できます。ただし、若い人のほうが、トレーニング効果が出やすい傾向があります。

これは、脳の「可塑性」、つまり脳の神経ネットワークが再構成したり新生したりする力が、一般には若い人のほうが強いからです。

自分ができるギリギリのレベルが最も効果的

多くの心理学実験データは、老若男女を問わず、作動記憶のトレーニングを自分ができるギリギリの難しさで継続することによって、作動記憶の容量を大きくできることを示しています。

また、ギリギリの難しさの作動記憶トレーニングを継続すると、作動記憶容量が増えるだけでなく、トレーニングをしていなかった他の認知能力まで一緒に向上することがあります。

この効果を心理学では「転移効果」と呼んでいます。

川島教授らの研究で、ギリギリの難しさの作動記憶トレーニングによって、流動性知能と呼ばれる能力が向上可能であることも示されています。

流動性知能とは、論理的に考える能力や、新しい問題を解決する方法を見つけ出す能力です。

いわゆる、お勉強ができるという「頭の良さ」ではなく、「生きる力」そのもの、つまり本当の意味での頭の良さを上げることができるのです。

学習療法は認知機能レベルに合わせた調整が重要

学習療法認知症の改善・予防を目的に高齢者施設で行っている「学習療法」は、川島教授と公文教育研究会との産学連携で開発した脳トレの一種です。

私は以前、父に学習療法を勧めたことがあります。

父は自治体主催の健康な人を対象とした学習療法である「脳の健康教室」に通い始めました。

しかし、しばらくして父に様子を尋ねると、
「もうやめたよ」
と言うのです。

理由を聞いたら、
「あんな小学生の計算みたいの、馬鹿らしくてやってられないよ」
と言っていました。

残念ながら、これはチューニングミスです。

学習療法には、サポーターと呼ばれる学習者の支援役がいますが、その人が父の認知機能レベルに合わせて教材をうまくチューニングしなかった、あるいはできなかったのです。

学習療法では、単純な計算をすばやく解く、大きな声で音読する、そして手で書くという、3つのことを行います。

この3つを行う教材は、学習者の認知機能レベルによって難易度を変えます。

事前に受けてもらう認知機能テストで、学習者の認知機能レベルを判定し、それに合った難易度の教材で行います。

その判定がうまくできていないと、ある人にとっては教材が簡単すぎて、
「こんなの馬鹿らしくてやってられないよ」
となります。

こういう人は私の父のように男性が多いのです。

学習療法での計算作業は、計算で答えを出すのが目的ではなく、脳のトレーニングが目的だと納得してもらうことが重要です。

しかし、サポーター自身がそれをしっかり理解していないと、学習者にその意味が伝わりません。

逆に、難易度が高すぎるものをやっても効果がありません。
「ダメだ、難しすぎて私には無理だ」
と自信を喪失してしまうからです。

このように、脳トレでは自分ができるギリギリのレベルが最も効果が出るのです。

即時フィードバックがやる気を引き出す

学習療法の場合は、もっと徹底しており、必ず100点満点をとってもらうようにします。

特に認知症の人にとっては、
「自分でもできるんだ」
と自信を持ってもらうために、これがとても大事です。

そして、もう一つ重要なのが、100点満点をとったら、すぐに褒めてあげることです。

これは心理学の「即時フィードバック」という手法です。

終わったらすぐに褒めるという行為を通じて、目標を達成したことをフィードバックしてあげると、
「私だってまだできるんだ」
「やればできるじゃないか」
という達成感が湧いてくるのです。

こういう瞬間には、やる気を生み出す神経伝達物質ドーパミンが脳内に放出されます。

経験豊富で上手なサポーターは「即時フィードバック」をさりげなくできますが、初心者サポーターはこれがうまくできません。

学習療法のサポーターは一見簡単そうに見えますが、実はとても奥が深く、きめ細かなヒューマンスキルが必要なのです。

体調に合わせた難易度で行うのがよい

先ほど、脳トレは自分ができるギリギリの難しさを継続することで、より効果が上がると述べました。

その難易度の調節は、学習療法の場合はサポーターが利用者の状況を見て行っています。

しかし、前述のように、チューニングミスが起こることがあります。

加えて、事前の認知機能テストで判定して教材レベルを調節しても、当日の体調不良で教材レベルと合わないことも、高齢者の場合は多々あります。

しかし、ニューロフィードバック型脳トレは、自分で自分の脳の活動状態を見ながら、その調節を自分自身で行うという点で、新しいものになっています。

人間の体にはバイオリズムがあり、体調の波があります。

そのため、前日はうまくできたのに、翌日は全然うまくできなかった、ということが時々あります。

ニューロフィードバック型脳トレでは、そのときの自分の脳の状態を見て、そのときに行うレベルを自分で決められます。

人間が本来持っている能力をより活用するために、日によって、または時間帯によって変わる体調に合わせ、その時点で一番合う難易度で脳トレができるのです。

これを「個別最適化認知トレーニング」といいます。

脳トレで医療だけに頼らない健康づくりを

脳トレだけに頼らない体づくりニューロフィードバック型脳トレは、株式会社NeUによって一般向けの教育用途、能力向上用途として展開されています。

医療用途にする選択肢もありましたが、そうすると認証を受けるための基準が高く、厳しい品質管理が要求され、時間もコストもかかってしまいます。

また、マーケットも限定され、扱えるのも医師に限られます。

そのため、一般向けの教育用途、能力向上用途で、多くの人に使ってもらうことにしたそうです。

今の日本の財政状況を鑑みると、これ以上医療費を無尽蔵に増やすことはできません。

できるだけ医療ではない方法で、一人ひとりの健康状態を改善、増進、維持していくことが、これからは重要になります。

また、ニューロフィードバック型脳トレは、ストレスコーピングにも応用できます。

ストレスコーピングとは、「ストレスに対処する」という意味です。

精神的なストレスがかかると、脳内にコルチゾールというストレスホルモンが分泌されますが、ニューロフィードバック型脳トレによって、ストレスへの対処力を高めることも期待されています。

有酸素運動+脳トレでさらに効果が期待できる

有酸素運動の重要性については「秘訣その1」で述べましたが、有酸素運動を行うとBDNFというたんぱく質が分泌されることが、研究者の間では知られています。

BDNFBDNFはBrain Derived Neurotrophic Factorの略で、日本語では脳由来神経栄養因子と呼ばれています。

この神経栄養因子は、神経細胞に細胞の外側から働く、可溶性、つまり水に溶けるたんぱく質の一種です。

神経細胞を新たに発生させたり、成長させたり、維持や再生を促す機能があることがわかっています。

BDNFは脳内に広く分布しており、神経細胞の動きを活発化させると考えられています。

特に記憶にとても重要な部位である海馬に多くあり、動物実験により、記憶や学習などの認知機能を促進させる可能性が示されています。

これらのことから、有酸素運動と脳トレを組み合わせることで、より効果的な脳のトレーニング効果が期待できます。

つまり、有酸素運動を行うと、脳内に神経細胞の成長を促すBDNFが分泌されるため、その後に脳トレをやれば、有酸素運動をしないときよりも、さらに認知機能を高められる可能性があるということです。

私は中高年の方向けの講演などで、次のような話をします。

「皆さん、朝起きたら、朝日を浴びながら30分間リズミカルにウォーキングをしましょう。その後に、シャワーを浴びてスッキリして、ちゃんと朝食を食べる。そして10分間の脳トレをやる。1日1時間余りのことですが、これがとても体にいいですよ」

これに加えて、どのような栄養を摂ったらさらに効果的かについては「秘訣その4」で述べます。

自分の脳の計測は怖くない

これまで小型NIRSのような商品が身近になかったこともあり、脳の計測に対して怖いと思う人が、中高年の方のなかに少なからずいます。

認知機能が衰えた自分の脳を見るのが怖いという感覚です。

しかし、こうした反応をするかどうかは、その人の当事者意識の差によります。

親の認知症で苦労したから私は絶対にボケたくない。自分の脳をこれからも元気に保っていかなければいけない。

そういう危機感を持っている人であれば、小型NIRSのようなものがあるならぜひ使いたい、という気持ちになるでしょう。

これは時代意識というもので、10年前に比べて人々の健康に対する意識は高まり、認知症に対する意識レベルもかなり変わりました。

その一方で、認知症は怖い、脳の計測なんて嫌だと思っている人も、まだ多いようです。

その意識をこれからどう変えていくか。

これは自身の健康に必要なことで、プライバシーもきちんと守られているから怖いことではない、ということが広く知られていけば、脳の健康を自分で確認し、整えるという考え方も普及していくと思います。

脳も身体と同じように使い続けることが大切

脳も身体と同じよう使う脳トレは、魔法のように認知症を防いだり、すべての認知機能を若返らせたりするものではありません。

しかし、脳も身体と同じように、使わなければ衰えやすくなります。

身体を動かすことで筋肉を維持するように、脳も適度な負荷をかけて使い続けることが大切です。

大切なのは、自分にとって簡単すぎず、難しすぎない、ギリギリできるレベルに取り組むことです。

そして、楽しみながら続けることです。

人生100年時代を自分らしく生きるためには、足腰の健康だけでなく、脳の健康も大切な資産です。

有酸素運動で身体を動かし、脳トレで脳を使う。

この両方を日常生活に取り入れることが、認知機能を保ち、健康寿命を伸ばすための大きな力になります。
Faq

よくある質問

Q音読が脳を活性化することはわかりましたが、読書(黙読)はどうでしょうか
A

結論から言えば、「そこそこ活性化」します。ただし、音読に比べると活性化する脳の部位が少なくなります。

これは、音読と言う行為が黙読に比べて脳の多くの部位を使っていることを意味します。また、音読の際にできるだけ「大きな声で」「速く」読むと、さらに脳の多くの部位が活性化することもわかっています。

まとめると、黙読<音読<大きな声で音読<大きな声で速く音読、の順に脳活動を活性化する度合いが強くなります。詳細は次の記事をお読みください。
https://muratainc.com/archives/21929

Q高齢になるとやりがちだが、避けた方がよい行動は何ですか
A

最も避けた方がよいのは長時間のテレビ視聴でしょう。テレビを観ている時には、画像を認識する脳の後頭葉と音を認識する側頭葉は使われますが、前頭前野は全く使われません。実はこの場合、前頭前野には抑制がかかり、活性化しない状態であることがわかっています。

前頭前野は脳の司令塔と呼ばれ、脳の他の領域を制御する最も高次な中枢です。一日に数時間程度の視聴であれば問題ありませんが、毎日長時間(5~6時間以上)この状態が続くと、認知症予備軍へまっしぐらとなります。

老人ホームなどで高齢の入居者がロビーなどでテレビをずっと観ている光景をよく見かけますが、こうした生活習慣は実は認知症加速器になっていることに注意が必要です。

Q脳トレは効果がないという研究者がいますが、本当でしょうか
A

脳トレは考案者の東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授のグループが26年以上前から研究を重ね、その科学的なエビデンス(根拠)は数多くの学術論文に掲載されています。効果がないという研究者は、残念ながらそうした論文に目を通したことがない場合が多いようです。

スマート・エイジングについてより深く知りたい方は、村田裕之の講演会をご覧ください。講演会では、さらに興味深い動画やグラフをお見せして、
秘訣を実践を交えてわかりやすくお話ししています。