先週から東京都内を脱出する外国人が増えています。
放射能被害を避けるためというのが理由です。
私の友人の外国人も大使館から指示が出たとのことで
13日には関西に脱出したとの連絡がありました。
しかし、文科省がネットで公開している首都圏(1都6県)での
放射線の計測値を見る限り、実は人体に被害を及ぼすような
数値になっていないことがわかります。
たとえば、東京都(新宿区)の場合(22日15:40作成グラフ)、
過去数日、その数値は0.06マイクロ・シーベルト程度です。
その後、21日の12時から22日6時までの間に
0.1マイクロ・シーベルト程度になりましたが、
それ以上は大きくなっていません。
http://mextrad.blob.core.windows.net/page/13_Tokyo.html
仮に、この水準の放射線を一年間浴びたとすると、
その量は0.1×24時間×365日=876マイクロ・シーベルト
=0.876ミリ・シーベルトとなります。
(マイクロ=1000分の1ミリ)
一方、私たちは普段の生活の中で
自然の放射線を浴びています。
その数値は世界平均値で年間2.4ミリ・シーベルトです。
これらより、仮に東京で今の水準の放射線を一年浴びても、
その量は一年に自然に浴びる量よりも
遥かに少ないことがわかります。
他方、国外脱出で飛行機に乗り浴びる放射線(宇宙線)は、
東京にいて浴びる量よりもむしろ多いのです。
この点は東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が
「放射能の影響をどうとらえたらよいのか?」という寄稿で
指摘されているほか、多くの専門家が指摘しています。
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/03/20110321t73060.htm
たとえば、東京からニューヨークへ飛行機で往復すると
0.2ミリ・シーベルトの放射線を浴びます。
これを浴びたからと言って直ちに人体に被害が
あるわけではありませんが、浴びる放射線の強さは
東京都内よりも飛行機の中の方が強いのです。
したがって、放射線の強さを理由に、
東京を脱出する必要は全くありません。
にもかかわらず、外国人の東京脱出が続いている理由は、
特に欧州各国の大使館が脱出を推奨していることです。
しかし、それ以上に、前述の科学的な計測値の存在と
その数値の意味が、在京の外国人の方に
十分に認識されていないことが大きな理由と考えられます。
これには言葉(日本語)の壁と
政府の説明・メディアの報道スタイルに
原因があると言えましょう。
放射性物質に関する政府の説明やメディアの報道は、
日本人にとってもわかりにくいです。
特にいくつかのメディアの報道では、
計測された放射能が基準値の何倍と強調するのですが、
それが人体にとってどの程度有害なのか、
その理由はなぜなのかは、あまり説明されません。
日本人ですらよく理解できない放射性物質の話は、
日本語がよくわからない外国人にとっては、
より大きな不安となってしまうのです。
したがって、メディアの報道に振り回されないためには、
公開されている計測データをもとに、
自分の居場所の放射線の強さがどの程度なのかを、
自分で確認する方が、むしろ安心できると思います。
以下にその方法を記します。
- 文科省のホームページ http://www.mext.go.jp/ の 「全国の放射線モニタリング状況」から 自分の居場所の都道府県をクリックする。
- 該当する地域の「環境放射能水準」のグラフが表示されるので、 その数値を読み取る。 たとえば、埼玉県だと、ほぼ東京都と同じ数値(0.1ミリ・シーベルトが読み取れる。
- 仮に、現状数値が一年間続いた場合の数値を次の通り計算する。埼玉県の場合、0.1×24時間×365日 =876マイクロ・シーベルト=0.876ミリ・シーベルト
- 自然の放射線量の世界平均値 年2.4ミリ・シーベルトと比較する。 2.4ミリ・シーベルト以下であれば、普段の生活で浴びている数値と同程度以下と評価できる。
この方法なら、ホームページを見られる方は、
どなたでも数値を見て電卓で計算すれば、すぐ確認できます。
文科省が掲載しているデータさえ正しければ(そう信じます)
福島第一原発の近くを除く東北の大半の地域と首都圏で
普段の生活で浴びている数値と同程度以下であることが確認できます。
こうした確認を常に行えば、
風評に惑わされることもなくなるのではないでしょうか。
私は、首都圏に住んでいる外国人の友人たちに、
このことを伝えようと思っています。
*注:本小論では、一部で指摘されている「内部被ばく」の評価法については、言及しておりません。
●参考情報
河北新報3月21日 川島隆太教授
「放射能の影響をどうとらえたらよいのか?」
各都道府県の放射線計測値について
放射線数値の意味について
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