「六〇歳のラブレター」(NHK出版)という本は、最初の出版で一五万部以上売れた。
この本は、住友信託銀行が実施した「六〇歳のラブレター」キャンペーンから生まれた。一万五千通を超えて集まったシニア世代が配偶者に送るラブレターを選択、編集したものだ。
この本では「夫から妻へ」「妻から夫へ」の短いラブレターが実名入りで交互に掲載されている。初回の大ヒット以来、シリーズ化され、現在第五回のキャンペーン中である。
これらの動きを見ると、シニア世代が同世代の草の根コンテンツに大きな魅力を感じていることがよくわかる。それは、シニア世代の人達が今まで忘れていた「自分自身を素直に表現する」ということを六〇歳前後になってようやく取り戻しているかのように見える。
このようにシニアの自己表現機会を応援することは、企業にとってもメリットが大きい。この企画を実施した住友信託銀行は、このような企画を潜在的に待ち望んでいたシニア夫婦に対して「器の大きな企業」としての評判を高めたはずである。
このように、あるテーマのもとで集うシニア世代を中心とした何らかの「集まり」(これを同好コミュニティと呼ぶ)と円滑に連携できると、企業にとってのビジネスチャンスが広がる。ところが、この「円滑な」連携関係を築くのが、なかなか容易ではない。その最大の理由は、同好コミュニティが、企業との連携に対して心理的抵抗が根強いためだ。
(本文より抜粋)
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