アメリカでは退職者向けに
リタイアメント・コミュニティという居住形態が
発達しており、全米で1100を超える数が
建設されている。
その中でもマサチューセッツ州ボストンに
隣接するニュートンにあるラッセル・ビレッジは、極めてユニークなものだ。
併設するラッセル・カレッジが運営する
このビレッジは、何と大学キャンパス内にある
リタイアメント・コミュニティ。
2000年5月にオープンし、
現在の入居者は210人で既に満杯。
さらに100人が入居待ちという人気ぶりだ。
このラッセル・ビレッジには、従来の
リタイアメント・コミュニティにない特長がある。
第一に、入居者に年間450時間以上の
講座受講を義務付けた全米初のリタイアメント・コミュニティであること。
この時間数はカレッジの生徒とほぼ同じ。
つまり、入居者は大学生並みに勉強する必要がある。
このような義務を設けた背景は、ラッセル・カレッジの教育方針に加えて、
土地利用の条件として生涯学習を絡めた住宅開発を
ニュートン市から強く要請されたことにある。
第二に、入居者はビレッジ独自の講座に加えて、
ラッセル・カレッジの講座にも参加できること。
たとえば「ミュージカル劇場」という講座では、
アメリカ発祥のミュージカルの芸術性について若い学生と一緒に学ぶことができる。
数あるリタイアメント・コミュニティの中で、
若い学生との世代間交流を実施している例はほとんどなく、先進的だ。
入居者は、契約の際に支払う「入居費」と
月々に支払う「月間費」、「駐車場費」を負担する。
入居費は、$217,000 〜$870,000。この費用の90%は退出時に払い戻される。
月間費は、$2,193 〜$5,376。
これらの費用に生活に必要なサービスは、ほとんど含まれる。
また、入居者どうしの交流を促すカフェテリア、プール、フィットネスジム、サロン、
ケーブルテレビ、高速ネットアクセス、市街地への交通手段などが完備されている。
入居者の年齢範囲は65歳から95歳までで、半数が4年生大学卒以上と高学歴だ。
引退前の職業は、研究者、教師、医者、弁護士、実業家が多い。
年収レベルは、いわゆるミドルアッパー層が大半だ。
入居前の居住地は70%が10マイル(16キロ)以内。
一般に、アメリカのリタイアメント・コミュニティの90%は、
入居者が入居前に30マイル以内に住んでいる。
講座内容では、コンピュータ関連、音楽(演奏ではなく、背景の分析・解釈など)、
フィットネス関連、言語、文学の人気が高い。
また、カレッジとのレベルの差はほとんどない。
したがって、予習を求められる場合も多い。また、希望により単位も取得できる。
さらに、高い専門性をもつビレッジの入居者が講師役になることも多い。 |