2007年問題の誤解
 
 
2006年2月3日 Vol. 80
村田裕之
 

「2007年問題」という言葉が、
マスコミなどでよく聞かれます。

先日私のインタビューが放映された番組でも
やはり冒頭に「2007年問題」という言葉が
登場していました。

2007年に他の年齢層に比べて人口の多い
団塊世代(1947年生れから49年生れの人)の
最年長者が60歳になり、一斉に定年退職すると
予想されるために発生する
さまざまな問題をひっくるめて、
「2007年問題」と呼ばれています。

ところが、実態は違います。
団塊世代は、2007年に60歳になっても
一斉に定年退職しないからです。

第一の理由は、定年の制度的延長です。

年金の支給年齢を従来の60歳から65歳に
引き上げるのと引き換えに、
65歳までの雇用継続を企業に義務付けた
改正高年齢者雇用安定法が、
2004年6月に成立しました。

この法律によると、雇用を延長する年齢は、
2006年度から62歳までとなり、
その後段階的に引き上げられ、
最終的には2013年度に65歳までの雇用が
義務づけられます。

これに従えば、2007年度には、
企業における定年の義務年齢が
63歳に引き上げられるため、
2007年に60歳になっても
定年にはならないのです。
(正確に言うと60歳で定年になっても
再雇用され、強制退職とはならない)

第二の理由は、早期退職の増加です。

会社のリストラ策により、退職金と
何年分かの給料の支払いを前倒しで受け、
早期退職する人が増えています。

年功序列賃金の名残の残る企業では、
中高年の賃金が一律に高めに
支給されているところが、まだ多いようです。

こういう企業では、早期退職の勧奨を行うところが
増えており、定年を前に早期退職する人が
増えているのです。

一方、これとは別に、体力のあるうちに、
これまでの仕事とは別なことに
挑戦したいという人も増えています。

こういう人は、会社の早期退職制度とは
あまり関係なく、早ければ50代前半で
退職していく人もいます。

これに加えて、現在の勤務先の会社を
「定年退職」したとしても、引退せずに、
別の会社で継続して働く、あるいは、
自分で小さな会社を興す人もいます。
一方、従来どおり悠々自適で過ごす人もいます。

このように退職の年齢が
多様化していることに加えて、
退職後のライフスタイルも、
どんどん多様化しています。

つまり、60歳イコール定年退職・引退という図式は、
もはや当てはまりません。

第三の理由は、団塊世代の女性の多くは、
とうの昔に退職していることです。

実は、団塊世代の半分以上は女性です。
そして、その多くが結婚とともに退職しています。
これらの女性には「定年退職」はありません。

この事実からも、2007年に団塊世代が
一斉に定年退職するという見方が、
いかに男性の視点に偏っているか、
お分かりいただけるでしょう。

こういう偏った視点になりやすい理由は、
企業社会が基本的に「男性社会」だからです。

以上の三つの理由から、団塊世代が2007年に
一斉に定年退職するというのは、正しくありません。

団塊世代でも早い人は2007年以前に退職し、
遅い人は2007年以降に退職するのです。
つまり、「2007年問題」とは、実は「2010年問題」であり、
「2005年問題」でもあるのです。

言い換えると「2007年問題」は、
とっくに始まっているのです。


では、なぜ、こうした「2007年問題の誤解」が
生まれるのでしょうか。

その背景は、「団塊世代は大きな塊」という
固定観念が根強いことにあるのです。


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●本稿の詳細にご興味のある方は次をご一読ください

団塊・シニアビジネス 7つの発想転換(ダイヤモンド社)
2007年問題の誤解

週刊エコノミスト 2006年1月17日号 
2007年問題再考 団塊世代「一斉離職」は本当か

 

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