『シルバー産業新聞』
      半歩先の団塊シニアビジネス

 

長寿命時代の「新しい古民家」

 
 

2010年8月10日号 第42回

村田裕之
 

本連載〇九年二月号、三月号で述べたように、戦後日本人の寿命はどんどん伸びてきた。二〇年後の二〇三〇年には平均寿命が九〇歳を超える可能性が十分ある。

一方、多くの調査によれば、八割近い人が高齢になっても可能な限り自分の家に住み続けたいと思っている。だが、現在の一般的な建売住宅の寿命はせいぜい二〇年から三〇年と言われている。日本人の寿命の伸びに合わせて、より長い寿命の住宅も必要となることが容易に予想される。

この「長寿命住宅」のモデルは、実はわが国には古くから存在する。いわゆる古民家だ。 古民家に使われている素材は、現在のハウスメーカーが供給しているものとは異なる。天然素材ばかりであり、いわゆる適材適所が採用されている。腐りやすい部分には欅、栗、桧などが使用され、梁には強度の高い松、内装には杉などの目に優しく木目の美しい木材や、調湿効果に優れた素材が使い分けられる。このため、メインテナンスさえ怠らなければ、数百年は持つようにつくられている。

こうした古民家の知恵を現代によみがえらす住宅を手掛けているのが、兵庫県神戸市に本拠地を置く建築設計集団YURI DESIGNである。代表の前田由利氏は、大阪府生まれの建築家。九五年に阪神淡路大震災が起こり、神戸市に住んでいた前田氏は、すべての建築物が一瞬にして破壊される体験をした。 震災後の瓦礫の山と化した建築物を目の当たりにして「壊れたら土に還る家をつくりたい」と思い、それまでの会社を退職し、YURI DESIGNを創業した。手掛ける住宅について、特に素材についてのこだわりが強い。

「私の設計したある家は、杉の柱、楢の床板、土塗りの壁で、階段の手すりは竹でできています。接着剤や塗料などの石油化学製品は使わず、できるだけ自然な素材にこだわってつくられた空間は、シックハウス症候群になりにくいばかりか、大変リラックスできます。光や手触りが優しく、癒しの空間になるのです。思わず触りたくなり、長居をしたくなります」

(本文より抜粋)

 

お問い合わせはこちら

 
 
 
Copyright© Hiroyuki Murata  All Rights Reserved