連載 シニアビジネス豊国論 第五回 学習療法が高齢者と施設を変える
 
  2010年8月19日 日経懇話会会報Vol.127
 
 
 

学習者だけでなく支援者も「学習」する  

一方、改善するのは実は学習者だけではない。支援者であるスタッフの意識も変わってくる。

認知症高齢者の介護現場では、一般に手厚く介護を行っても、改善の見込みがなく、介護スタッフはゴールの見えない徒労感に襲われることが多い。

ところが、学習療法に取り組み、認知症高齢者の脳機能の改善が実際に目に見えてわかると、「私が働きかけたことで、入居者の認知症が改善した。私でもこんな貢献ができるのだ」という達成感が得られ、これがスタッフのやる気を生み出し、さらなら改善アクションに向かっていく。

こうした「入居者」と「スタッフ」の改善のキャッチボールが施設全体の雰囲気を改善し、介護の質を向上し、結果としてマネジメントの質も向上していく。高齢者施設の経営者にとって、こうした相乗効果が学習療法導入の最大のメリットなのである。

世界から注目を浴びる学習療法

厚労省の推計によれば、日本の二〇一〇年における認知症人口は二〇八万人とされている。一方、世界全体では三五六〇万人と推計されている。現時点で日本の認知症人口の一七倍もの認知症人口が世界に存在する。

認知症は高齢化が進展する世界共通の大きな課題となっている。にもかかわらず、症状改善のための決定的な治療方法がない。現状認可されている薬物はその効果が症状の初期段階にしか有効でなく、しかも高価で副作用が多いという問題がある。

このような背景から、学習療法を海外で説明すると、例外なく驚きの声が上がる。特に認知症人口の多い米国、高齢化率の高い欧州で注目される。日本発の対認知症療法が海外でも利用される日が来るのはそう遠くないだろう。

(本文より抜粋)

 

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