連載 高齢社会対策で日本は世界のリーダーになれる 
−産学連携から見るシニアビジネス−
第一回 アンチ・エイジングからスマート・エイジングへ

 
  2010年1月15日 (独)科学技術振興機構 産学官連携ジャーナル1月号
 
 
 

筆者が所属する東北大学加齢医学研究所では、〇九年一〇月より「スマート・エイジング国際共同研究センター(Smart Ageing International Research Center, SAIRC)」が設立された。これは〇七年に学内横断組織として発足した「スマート・エイジング・プラグラム」の発展形である。センター長は、近年の脳トレブームの立役者で脳機能イメージング研究の第一人者として著名な川島隆太教授だ。

「スマート・エイジング」とは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」と定義している。 私たちは個人の加齢や社会の高齢化に伴い、解決が困難な多くの課題に直面している。

たとえば、老人ホームでは重い認知症を患った人が徘徊しないようにベッドに拘束され、人間的な扱いをされなかったり、頭脳は明晰なのに若いスタッフに子供扱いされ、個人の尊厳を傷つけられたりすることが、未だに存在している。 こうした課題に対してもっと知恵を絞り、人間らしく賢く対処する解決策が必要だ。そして、解決困難な課題への挑戦を通じて、私たち個人と個人から成る社会全体がその思考形態や行動様式において知的に成熟しなければならない。

スマート・エイジングという言葉にはこうした意味を込めている。 また、東洋には古くから、孔子の言葉「子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。・・・」に代表されるように、年を重ねることには深い意味があり、素晴らしいことであるという価値観が広く存在している。「年の功」という言葉もこの価値観を示したものだ。

一方、これまでの加齢医学研究所における研究により、大脳白質の体積が年齢とともに緩やかに増加することが分かっている。白質の大半は、脳の神経細胞どうしを結合する神経線維のネットワークであり、知識や知恵を形成する役割を担っていると考えられる。スマート・エイジングという概念には東洋的な価値観だけでなく、最先端の脳研究による科学的な裏付けも反映させている。

(本文より抜粋)

 

 

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